そこで、政府は医療提供体制を変える方策として、医療サービスの対価として支払う診療報酬の単価や基準を変えたり、都道府県に音頭を取らせたりする形で、できるだけベッド数や入院日数を減らす政策を展開しています。

 こうした政策は映画にも反映しています。例えば、長野県の地方病院を題材に2011年と2014年に製作された『神様のカルテ』では、主人公の医師、栗原一止(櫻井翔)が患者から「患者を回転させないとベッドの数には限りがあるんだし、どこの病院も大変だよね」と声を掛けられる場面があります。これは入院日数を減らそうとする国の政策が影響しています。

 しかし、こうした政策は一見すると、回りくどい印象を持つかもしれません。例えば、なぜ国や自治体は医療機関に対し、病床削減を「命令」できないのでしょうか。その答えは日本独特の医療提供体制に求められます。

 図をご覧ください。医療法ではベッド数20床以上を「病院」、それ以下を「診療所」と見なしているのですが、病院の68%を「医療法人」が占めています。これは日本の医療サービスの大半が民間によって担われていることを意味します。

 この結果、医療提供体制について、行政が自ら関われる余地は極めて小さくなっています。言い換えると、国や自治体が医療提供体制を変えようとしても、ダイレクトに関われないため、回りくどい政策で対応しようとしているわけです。

医療の非営利性とは
株式会社か否かだけ

 しかし、ここで矛盾が起きます。医療法は「医療の非営利性」を定めており、株式会社は参入できませんが、税金の支援を受けられない分、民間医療機関は経済採算性を気にせざるを得ません。実際、制度改正のたびに「病院の生き残り戦略」と銘打ったセミナーが開かれているのを見ると、いかに各医療機関が経済採算性を気にしているかが分かります。