外国人による不適正利用の
蓋然性は認められていない

 海外療養費は不正利用の温床のように見られがちだが、適切に利用するにはなんら問題はない。

 扶養家族として認められた妻や子どもが、祖国で病気やケガ治療のために医療機関を受診した場合に、海外療養費の申請をして、かかった医療費の一部の払い戻しを受けるのは合法だ。実際に医療機関を受診し、診療内容が分かる明細書や領収書などを揃えて申請すれば、払い戻しを受ける権利はある。

 出産育児一時金は、加入者本人のほか、扶養家族が出産したときも受け取れるので、子どもが生まれたという事実があれば、どこで生まれようとも給付の対象になる。その数が多いからといって、不正と決めつけることはできない。

 海外療養費、出産育児一時金は、制度として存在しているのだから、実際に自分がそのケースに当てはまれば利用するのは当然だろう。彼らもまた保険料を負担し、制度を支えている一員だ。書類に不備がないのに、「外国人だから」という理由で認めないのは不公平で、日本人が同じ疑いをかけられたら大きな問題になるはずだ。

 不適切利用を疑う声に押されて、国は2018年3月から、外国人を国保に適用する際の資格管理の厳格化を試験的に始めている。だが、実際、報道されているようなケースは極端な例で、外国人による不適切利用は多くはないことを、2017年12月27日に厚生労働省が出した「在留外国人の国民健康保険適用の不適正事案に関する通知制度の試行的運用について」で、次のように認めている。

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 本年3月、都道府県及び市町村の御協力の下、「在留外国人の国民健康保険の給付状況等に関する調査について」(平成29年3月13日付け保医発0313第1号保険局国民健康保険課長通知。以下、「全国調査通知」という。)により、在留外国人不適正事案の実態把握を行ったところ、その蓋然性があると考えられる事例は、ほぼ確認されなかった。

 しかし、公費や被保険者全体の相互扶助により運営する国民健康保険制度において、極少数であっても、偽装滞在により国民健康保険に加入して高額な医療サービスを受ける事例が存在することは不適切であるから、より一層、適正な資格管理に努める必要がある。

 そこで、今般、法務省と連携し、外国人被保険者が偽造滞在している可能性が高いと考えられる場合には、市町村が当該外国人被保険者を当該市町村所管の地方入国管理局へ通知し、当該取り消した事実を市町村に情報提供する等の新たな仕組みを試行的に創設することとする。(※太字は筆者)

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 つまり、不適切利用が多いことが確実に認められたわけではないが、予防線を張って外国人の国保適用を厳格化しようというもので、実態よりもイメージ先行で対応を始めた感が否めない。