Q 科学でどこまで判明した?
発達障害のサイエンスはまだ途上だ。脳のどの部分が発達障害と関係しているのか、実のところまだよく分からない。
脳の中で最も高次の、統合的な仕事をする場所は、前頭葉(中でも前頭前野)だ。発達障害に限らず、多くの精神疾患がここに関係してくる。だが、関係するのはこの部位だけではない。脳の右と左をつなぐ前帯状回、側頭葉内の扁桃体が関わるとされる。
さらに、ASDの原因としては、小脳も重要だろうといわれている。上位の脳症状は結果であって、実は脳幹部の異常が大本という見方もある。脳のさまざまな場所を示すデータが出てきているが、「ここがおかしければ自閉症」と決定づけるような場所や回路はまだ分かっていないのが現状だ。
脳研究はようやく緒に就いたばかりなのである。
ただし、メカニズム解明への突破口はある。「脳のどこかの領域ではなく、それらを結ぶ神経回路の異常に狙いを定めている」と、発達障害や精神疾患の病態生理を研究する内匠透・理化学研究所脳科学総合研究センターシニアチームリーダーは言う。