かつて、不妊女性は「石女(うまずめ)」と呼ばれ、離縁もやむなしとされた。しかし、現代の医学でわかったことは、不妊の原因の半分は男性側にあるという事実だ。最近では、結婚前の「ブライダルチェック」で男性不妊が判明し、破談になったり、結婚後も離婚原因になるケースが増えている。(ジャーナリスト 草薙厚子)
結婚前チェックで精子に問題が発覚
結婚を諦めたカップルのケース
過去2回の記事(「不妊の半数は男性が原因!『精子自体の異常』に関心高まる」「不妊治療『元気に泳ぐ精子は顕微授精OK』のウソ」)で、男性不妊の不妊治療後進国である日本の現実をお伝えしてきた。『本当は怖い不妊治療』(SB新書)を出版した後も深く取材をしていくと、男性不妊によって、子どもを授かることができなかったカップルには、離婚が多く見られることに気づいた。
「年齢も高かったので、赤ちゃんが産めなくなってしまうということで焦っておりました。私も婚約時にブライダルチェックを受け、妊孕性(にんようせい=妊娠する、させる能力)があるというデータを取ってきました。相手に対しても、もし私を愛して結婚してくれるのであれば、大変申し訳ないんですけども結婚するにあたって、精子が元気であるというデータを取っていただきたいとお願いしたのです」(40代前半の女性Aさん)
エリートで容姿端麗のこの女性は、「3高(高学歴・高身長・高収入)」の年上の男性を紹介され、意気投合して婚約に至った。この女性は結婚の条件として、子どもを産める元気な精子を持っている男性を求めたのだ。
「精子検査なんて全く考えていませんでしたが、彼女が望むのであれば、検査を受けてから結婚しようと思っていました」(40代後半の相手男性Bさん)
Bさんは、検査に関しては何のためらいもなかったと話した。富も名声も手に入れたが、ずっと独身だった。仕事に時間を奪われ、結婚しようと思った時には40代の後半に差し掛かっていた。彼はこれまで自らの努力によって勝ち進んできたこともあり、Aさんの要望を受け入れ、全ての条件がそろった段階で結婚しようと思っていたようだ。
しかし検査の結果、妊孕性のない、問題のある精子だったことが明らかになった。
「今まで自分の努力で仕事もお金も手に入れてきたのですが、初めて挫折というものにぶち当たりました。自分の精子は悪いわけがないという自信がありましたが、結果は悪かったのです。自分ではどうにもできません。彼女が子どもを希望しても、かなえることができないわけです。僕は身を引くから、もっと精子が元気な、僕以上に素晴らしい男の人はいるんだから、君はそういった人と結婚しなさい…みたいな感じですね」(Bさん)