ソーシャルメディアへの投稿を解析して、興味・関心の高い情報を自動的に収集、まとめてくれる『Board』。ユーザーをフォローしたり、ツイートをシェアしたりすることができる。

 近年、FacebookやTwitterの情報を集約して、そこに新たな価値を与えてくれるサービスが続々と誕生している。

 たとえば、以前小欄で紹介した「Memolane」(メモレーン)は、様々なソーシャルメディアへの投稿を時系列に並べて“自分史”を作成してくれるものであった。情報の一元化に留まらず、独特の切り口でまとめ上げてくれるものであるほど、ユーザーはそこで未知の発見を得ることができる。ソーシャルメディアは、単に自分のライフログを友人と共有するコミュニケーションツールという役割から変化しつつある。

 そんなことを改めて実感させてくれるサービスが、現役東大生チームが開発した「Board」だ。「Memolane」が“時間”という切り口だったのに対し、「Board」は“興味・関心”からソーシャルメディアの情報をまとめてくれる。TwitterおよびFacebookと連動して使用するが、まとめられる情報は、自分のものだけではない。それを基に導き出された“自分の関心や興味に近いと思われるユーザー”のツイートやストリームが、表示されるのである。

「Board」の特徴は、ユーザーの“興味・関心”を独自のアルゴリズムによって解析し、より適切な情報を自動で収集してくれる点にある。本や音楽の好みを共有する類似のソーシャルサービスは存在するが、その多くは改めてアイテムを登録していく必要がある。

 一方、「Board」の場合、自身のツイートやストリームから“興味単語”を自動で抽出。その“興味単語”を基にして、マッチングするユーザーやツイートを探し出してくれる。自分は、いつも通りTwitterやFacebookに(あるいは「Board」上から)投稿するだけでよい。投稿するたびに、「Board」に表示される情報はほぼリアルタイムで更新されていく。

「『Board』の一番の魅力は、投稿する度に生まれる共有感、一体感だと考えています。何気ない発言や写真を投稿することで、世界にはこんなにも自分と興味の近い人がいる、こんなことでも繋がれるんだ、という感動をぜひ味わって欲しい」(株式会社コールボードの大塚淳史・代表取締役CEO)

 FacebookやTwitterでは、ユーザーは能動的に行動しなければ情報が入ってこない。一方の「Board」は受動的と言えるが、それゆえに、思いがけない出会いや発見をもたらしてくれる。これは確かに、従来のソーシャルメディアでは味わうことのできなかった体験である。

 それだけに開発の苦労も多い。とりわけ、「興味を中心とした自動ネットワークという新しい概念を伝えるUIの制作」「高負荷の処理を実現する低コストハイパフォーマンスサーバの構築」「精度の高い言語解析」の3点が目下の課題だという。

「いずれも答えや前例のない挑戦要素が多く、未知の領域です。同時に、それらをきれいにまとめて一般的に扱いやすいものに仕上げることも難しい。今も日々研究中です」(同社の高瀬真彦・取締役COO)

 “興味・関心”の自動収集の精度が上がれば、マネタイズへの道も十分に開ける。たとえば、ユーザーが本当に求める広告を、コンテンツとして提供することも可能となるからだ。

「ユーザーにとって快適な空間を自動的につくる」(高瀬氏)ことをモットーに掲げる「Board」。自分だけの“掲示板”が、未知なる体験を開く“扉”へと変わるかもしれない。そんなワクワク感を抱かせてくれるサービスだ。

(中島 駆/5時から作家塾(R)