川竹一氏川竹一(ソースネクスト執行役員シニア製品設計スペシャリスト) Photo by Masato Kato

 まるで通訳がいるように対話できる人工知能(AI)翻訳機。日本人にとって“夢”の機械が実用段階に入った。家電量販店には「音声翻訳機コーナー」が現れ始めている。

 人間の脳をまねたニューラルネットワークを活用した翻訳の技術が進化しており、こうした技術を背景に、音声翻訳機がスマートフォンや携帯音楽プレーヤーに続く、人気のガジェット機器のポジションを得つつあるのだ。

 その翻訳機市場で、圧倒的なシェアを確保しているのが、今年9月にソースネクストが発売した「ポケトークW」。調査会社のBCNによると、10月の音声翻訳機カテゴリーで、ポケトークのシェアは97.5%に達し、ログバーの「イリー」、東江物産の「ランジー」、フューチャーモデルの「イージーコミュ」など翻訳機の競合を抑え圧倒的な地位につく。

 ポケトークは初号機が2017年12月に発売され、「W」は改良を施した2号機。英語、中国語、ドイツ語、フランス語のほかオーストラリア英語などの「方言」を含めて74の言語に対応する。

 18年9月末から明石家さんまをイメージキャラクターに起用して大々的に宣伝。テレビCMではさんまの“弾丸トーク”を全て翻訳し、翻訳精度の高さをアピール。海外旅行や外国語を学習する個人のほか、鉄道、ホテル、飲食店、百貨店などの法人の利用が急増している。

「おかげさまで人気があるのは使いやすさ故でしょう。翻訳機はそこが全て。Wでは徹底的にこだわった」と開発者の川竹一は話す。翻訳精度、コミュニケーションを妨げない応答速度、シンプルな操作性などがヒットにつながった。