日産の今後だが、ルノーを排除して「日本の民族系資本」の企業グループに戻ろうとするのは間違った考えだ。現在、ルノー・日産・三菱のアライアンスは、生産台数でトヨタを抜いて世界第2位を誇っている。ルノーと組むことで達成した大成果を、わざわざ捨てることはない。

 経営の自立性を回復した日産は、今後は逆にルノーを買収するなど、世界第2位のアライアンスの主導権をどう握るかの戦略を立てることが重要だ。もちろん、ルノーの背後にフランス政府がいるのであれば、日産も安倍晋三政権の後ろ盾を得て、戦略を練る必要があるだろう。

 しかし、それは政府によって企業の「民族主義」を強化するという意味ではない。安倍政権は、日産のストーリーをサクセスストーリーと捉えて、外資のカネと経営理論を、日本企業を強化するために利用するという、したたかな戦略を考えるべきなのだ(第57回)。

「日産再生のサクセスストーリー」という
ポジティブな側面こそ「本質」である

 この連載で主張してきたが、日本は外資導入を経済成長につなげられる条件を備えている(第43回)。「有名ブランド」「地理的条件の良さ」「知識・情報の集積」「高い技術力」「質の高い労働力」「政治的リスクの低さ」というグローバルビジネスのための好条件を備える日本は、政府が余計な規制を作って斜陽産業を守るような愚策を取らない限り、世界中からヒト、モノ、カネが集まってきて、「豊かな場所」になるはずなのである。

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されます。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 日本は戦後、「開発主義国家モデル」と呼ばれる独特の国家モデルにより、高度経済成長を達成した。それは、経済成長に必要な人材、産業を政府(中央省庁)の主導により自国内ですべて育成する「自前主義」のモデルであった。

 しかし、1990年代以降、経済のグローバル化による大競争に晒された日本企業が多国籍化し、国内産業が空洞化した。それに対応するための構造改革や大学の国際化が取り組まれたが、高度成長の成功体験から抜けられず、日本は「失われた20年」と呼ばれる停滞期に入り込んだままである。

 グローバル経済の時代には、もはや「自前主義」は通用せず、諸外国とのネットワークにより分業体制を築くことがより重要となる。しかし、過去の成功体験を忘れることができず、停滞期から抜け出すために、「自前主義」により再び世界一を目指すという方法にどうしてもこだわってしまう。そのため、もはや斜陽産業となった輸出産業を保護しようとしたり、国内空洞化を防ごうと、無理に企業の海外進出を引きとめようとして、結果として経済の停滞を長引かせてきたのだ。「失われた20年」とは、この堂々巡りであったといえる。

 今後、日本は「自前主義」にこだわらず、諸外国の力も利用しながら、したたかに、しなやかに経済力を強化していく道を選んでいくべきではないかと考える。「ゴーン氏逮捕」という衝撃的な事件があったために、ネガティブな側面に焦点が当たりがちだが、「日産再生のサクセスストーリー」というポジティブな側面にこそ、我々が考えるべき事の「本質」がある。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)