会社員の健康保険には、病気やケガをしたときの医療費の保障だけではなく、療養のために仕事を休んでいる間の所得保障をしてくれる「傷病手当金」という制度もある。
ところが、そのことを知らず、損している人が非常に多いのだ。
2014年5月に東京都が発表した「がん患者の就労に関する実態調査」の報告書によると、傷病手当金を「利用した」と答えた人は31.5%に留まっており、「知らなかったので利用せず」と答えた人が39.5%に上っているのだ。
がんの治療は、切除術に加えて、放射線や抗がん剤を併用することが多くなっており、療養期間が長引く傾向にある。健康保険の「療養の給付」や「高額療養費」によって医療費の負担を抑えられるとはいえ、健康ならかからないお金だ。それを継続的に自己負担しなければならず、療養期間中も生活費や子どもの教育費などは変わらずにかかる。
傷病手当金をもらわないで、療養期間中の医療費や生活費をどのように乗り切ったのか。この調査から読み取ることはできないが、傷病手当金の存在を知っていれば、お金の心配をしないで療養に専念できた可能性もある。
せっかく制度があっても
申請しないともらえない
傷病手当金は、病気やケガをして仕事を休んで、会社から給料をもらえなかったり、減額されたりしたときに給付を受けられる。1927年(昭和2年)に、労働者のための健康保険法が施行された当初から、療養の給付とともに備えられている。支給額や支給期間、支給要件は次の通り。