傷病手当金と傷害保険の
二重給付は受けられない

 ただし、原則的に社会保険は支給理由が同じものに対して、二重に保障しないことになっている。傷病手当金は所得保障のための給付なので、公的年金の障害年金や老齢年金、労災保険、雇用保険の基本手当(失業給付)、健康保険の出産手当金と同時にもらうことはできない。

 たとえば、障害年金は、働いていても給付を受けられることがあるため、会社員で障害年金を受給している人もいる。障害年金を受給中の人が、その障害の原因となった病気で仕事を休んでも傷病手当金をもらうことはできない。

 また、傷病手当金の受給中は、失業給付は受けられない。通常、退職するとハローワークで失業給付の手続きをとるが、傷病手当金の受給中に退職した場合は、失業給付はもらえないのだ。失業給付がもらえるのは、原則的に退職した日の翌日から1年間なので、傷病手当金をもらっている間に、失業給付の受給資格が消滅してしまうことがある。

 せっかくの失業給付の受給資格を失わないためには、退職後に傷病手当金をもらっている人はハローワークで延長手続きをとっておくようにしたい。病気やケガ、出産などで30日以上働けない場合は、失業給付の受給開始を最長4年間延長できる。

 他の制度との併給を禁止するルールはあるが、傷病手当金をもらえれば、療養中でも生活の安定を得ることはできる。

 日本には、健康保険や年金保険などに充実した公的な社会保障制度がある。傷病手当金をはじめとする制度を上手に使っていけば、病気やケガによる経済的リスクを抑えることはできるので、もしものときは「何か使える制度はないのか」を探すようにしたい。

 だが、健康保険や年金保険のありがたみは、それを利用する立場になってはじめてわかることも多く、一般の人が制度に詳しくないのは仕方のないことでもある。だとすれば、制度に近いところにいる医療機関のスタッフ、企業の社会保険を担当する部署などが、使える制度をアドバイスする必要があると思う。

 健康保険や年金保険で使える制度を知れば、病気やケガをしたときの医療費や生活費への不安はずいぶんと解消されるはずだ。必要な人に、必要な制度が届くように、一歩踏み込んだ社会保険の運用を期待したい。

(フリーライター 早川幸子)