美容外科の参入で
おかしくなった日本のレーシック
しかし24年前のような「レーシック初期」だけが、日本でレーシックが「限られた本当の眼科外科医によって手術されていた」幸せな時期だったのです。
美容外科系の参入で日本のレーシック手術はおかしくなりました。その後は人々の間で、「レーシックは近視が治せる夢のような方法だ」として話題になってしまいました。テレビや新聞の取材が続き、私は「夢のような方法などない」と強調したのですが、人々の期待値は加熱していきました。
私はアジア地区のトレーナーズ・トレナーとして全アジアの医師を指導しましたが、まだ眼科医だけが手術をしていたころには問題がなかったのです。ところが、お金の匂いを嗅ぎつけた美容外科系の施設が、突然に豊富な宣伝で患者を誘導してレーシック手術を開始し、多くの問題が起き始めました。
美容外科系の施設で手術を失敗し、網膜剥離などの合併症を引き起こされた患者さんが、今でも助けを求めて私の病院に来ます。彼らは異口同音に、「手術を受けた美容外科系のクリニックでは、良いことばかり言われ、『レーシックなんて簡単なんだ』と思っていました。早く本当の知識を知りたかった」と言います。失敗して初めて、自分の判断ミスに気付くのです。
私は患者さんに必ずこう言います。
「どんな薬でも、よく効くものには副作用があります。手術も同じで、良い点だけでなく、時にはマイナスに働くこともあるのです。患者さん個々に合わせた手術の選択と適用を考えるのが、本当のプロなのです」
眼科でさえない美容外科系の近視矯正手術施設での手術は危険極まりないのです。これは知っておかねばなりません。もしも合併症が起きても治療できないどころか、その合併症に気づかないまま失明させている例が多くあります。せめて、美容外科が作った近視矯正クリニックだけは、やめたほうが良いと思います。
例えば、S川近視クリニックなるところは、以前は医師法違反であるテレビなどでの宣伝活動を盛んに行っていました。また、患者を紹介した患者にはお金をキックバックする報奨金制度があるようです。このようなことも本来医療法違反です。
無料診察と銘打って、その施設に入ると手術予約をしないと帰さないところもあるそうです。このような方法は美容外科ではよくあるのかもしれません。しかし、こと眼科手術の領域で、このような医療法違法行為で患者を大量に集めて、悪い結果を大量に作り、日本の近視矯正手術の評判を貶めて、眼科治療が正常な発達ができない歪んだものになったことは、実に嘆かわしいことです。
レーシックは現在でも、症例を選べば効果的です。しかしレーシックは角膜を削るので、あまり強い近視では合併症などの欠点が多いのです。ですが軽い近視矯正方法としては、まだ良い方法であると言えます。ただし、ちゃんとした白内障や網膜剥離の手術などを完璧に行える眼科外科医に依頼するべきです。