グーグル後の転職先として同じような外資系企業、あるいは日本の大企業という選択肢もありましたが、私は少し変わっているところがあって、人と違うことをやるほうが自分の差別化になると思っていたので、私に近いキャリアの人には少なかったスタートアップ企業への転職を決断しました。

 私はずっと外資系で働きながらも日本を応援したい、日本人として日本企業をさらに発展させたいという思いがありました。日本企業には効率性と品質を突き詰めるなどの優れた点があって、米国の西海岸の会社のやり方がすべて優れているわけではありません。日本ならではのやり方を見つけることで、世の中にもっとインパクトを与えるプロダクトが作れるはずです。

今やテクノロジー企業でない企業はない
それでも「内製化」が進まない理由

――現在、多くの日本企業ではデジタルトランスフォーメーションの重要性が叫ばれています。実際に、ITエンジニアリングの内製化は進んでいるのでしょうか?

 日本企業の中でも大きな差が出てきていると思います。強い危機感を持ち、動き始めている組織がある一方、いまだにうちはテクノロジー企業でないからとデジタル技術やソフトウェアへの投資をあまりしていない企業に分かれている印象です。

 私の持論では、今やテクノロジー企業ではない企業はありません。すべての企業がテクノロジー企業です。私の解釈ではこれがデジタルトランスフォーメーションの本質で、要するに、今は技術がなければ成り立たない事業が増え、技術があってこそ初めて製品の差別化ができる時代になっています。

 今までのIT技術はコスト削減や省力化という生産性や品質を高める文脈だけで使われていましたが、ここ5~10年で社会変革を起こしているサービスの多くは、IT技術がなければ成り立たなかったものばかりです。

 すべてを内製化するかどうかは難しいところですが、自らがコントロールできる状態にして、外部に丸投げやブラックボックス化は避けるべきです。そうでなければ、あらゆる意思決定ができなくなります。

 しかし多くの日本企業は今でも、一括してシステムインテグレーター(SIer)に依頼し、中身を全て委ねています。それでは彼らが選択を誤ったり、開発がうまくいかなかったりすれば、事業そのものが立ち行かなくなります。対してこちら側に主導権があり、技術選定を含めて自分たちで行うなら、リスクは自分たちが抱えることになります。失敗の可能性もありますが、リスクコントロールは自分たちが行えるので、例えば、委託したSIerの判断が正しくないと思うならば、他社に依頼したり、自分たちで作ったりすればいいのです。