一方で、日本企業で働くエンジニアのキャリア相談を受けていると、その真逆で遊びが許されないところが多いようです。今のSIerのビジネスが全て悪いわけではありませんが、多くは工数ビジネスです。例えば、最初に営業が握っていた工数に対して、改善の提案をすれば予定外の工数増になるため、提案ははばかられてしまいます。

 そうした影響からか、日本の多くのエンジニアは、仕様書やプロジェクトマネジャーの指示に従って、納期までに決められたことをやることに重きを置きすぎているように思います。そういった環境では、デジタルトランスフォーメーション的な技術で競争優位性を出していくアイデアが生まれにくいでしょう。

 これからの時代は、与えられた仕事をこなすだけでなく、誰のためにどういう価値を提供しようとしているものか自分で理解した上で作ることが必要になります。もちろんワークライフバランスは重要ですが、技術の進化はとんでもなく早いので新しい技術を自ら学び、職場に提案していく人が求められます。エンジニアの実力不足は時として組織全体の進化を止めてしまいかねません。

デジタル化に遅れた
日本企業の“2つの未来”とは?

――IT技術の進化や内製化が進まない企業は将来、どうなるでしょうか?

 もし日本でそのような状況になれば、2つの未来が起こりうると思っています。

 1つは日本の産業界全体を見ればほぼ同じ状態(内製化が進まない)なので、一つ一つの企業の日本での立場はあまり変わらないけれど、グローバルでの競争力が落ち、日本経済全体の地盤沈下を招くという未来です。

 もう1つは、技術の価値が十分にわかり、内製化や自分たちで主導権を持った形で技術を使いこなしていく企業は生き残り、そうではない企業が潰れていく未来です。その際、新興企業や外資系企業の存在感が増す可能性が大いにあります。それは必ずしも悪いことではありません。

 アマゾン、グーグルといった巨大プラットフォーマーは、最初に進出していたサイバーワールドだけでなく、どんどん領域を広げ、リアルワールドをも侵食しています。アマゾンやネットフリックスが自らドラマもバラエティも映画もつくり、日本でもタレントが彼らの番組に直接出演する時代になっているのがその例です。