低い稼働コストで、立地や出荷時期を問わずサケの養殖ができる三井物産の陸上養殖事業

 陸上養殖には通常は海水を取水し、定期的に水を入れ替え、サケの生育に必要な15度まで冷却する、といったプロセスが必要だ。だが同社では、水道水から作る人工海水を使う。水の交換をほとんど必要としないため、冷却のための電気代が抑えられる。

 つまり水道と電気さえあれば立地を選ばないため、消費地で養殖することが可能なのだ。空輸と冷蔵運送のコストを大幅に削減することで価格競争力を高めている。大手スーパーで行ったテスト販売では、ライバルとなるノルウェーサーモンと同等の品質・価格で出荷することができた。

 19年4月の初出荷を目指しており、それが成功すれば20年以降は生産規模を年産1500トンに拡大する計画だ。そうなれば国内で最大規模となる。さらにその先はアジアへの進出も狙っている。

 そもそも、世界的に見れば漁業を取り巻く環境は全く悪くない。魚をタンパク源として食べる文化は広がりつつあり、世界で水産資源の需要が高まっている。そのため下表のように、大手商社による投資も盛んだ。三菱商事は14年、世界第2位グループのサーモンの養殖会社、セルマックを約1500億円で買収した。チリとノルウェーに拠点を持ち、北半球と南半球の双方の生産拠点を押さえた格好だ。