ところが日本では様相が異なる(上右図参照)。水揚げされる350魚種のうち、TACが設定されているものは8種類のみ。それ以外は、基本的に早い者勝ちだ。卵を産む前の親魚やこれから育つ稚魚も含めて獲る、通称“オリンピック方式”がまかり通る。魚を育てる環境は破壊され、生育状態が十分ではない魚も獲るため、せっかく獲った魚も高くは売れない。

 さらにそのTACも日本では機能しているとは言い難い。TAC制度を導入して20年たつものの、その間に資源は右肩下がりで減り続けてきたことがその証左だ。

 TACの枠が実際の漁獲量の数倍もの過大な数値に設定されていたり、本来は別々にTAC枠を設定すべきもの、例えば日本海のマサバと太平洋のゴマサバが「サバ」としてひとくくりにされたりしており、「科学的管理の体を成していない」と元水産庁官僚で東京財団上席研究員の小松正之氏は指摘する。さらに、漁業者の要望でTACの増枠も可能でザル状態だ。

 実は、現在国会でこの状況を大きく変えるための改正漁業法を審議中だ。全体の80%の魚種にTACを設定し、諸外国と同様にIQで管理するとしている。「今後は魚種ごとに回復目標と年限を決め、IQで管理する。資源が危機的状況になった今こそ、これまでやりたくてもやれなかったことを一気に進める」(水産庁幹部)という。

 その他にも、日本の漁業には恐るべき非効率性が残っている。