広告宣伝費に支配されたメディアが隠してきた事実

 食品業界の宣伝物は私たちの生活に溢れかえっている。メディアにも無数の広告が載り、道を歩いていても無数の食品関連商品の看板が乱立している。

 前回のコラムで貧困を生み出している頂点にわれわれ消費者がいると書いたが、実際、多くの消費者は自分こそが貧困を作り出している主犯格だという意識はないだろう。ごくごく普通に消費者として合理的な選択をしているだけだ。

 それが結果的に回りまわって生産者や、食システム(食料の生産、流通、消費の各段階を切り離して捉えるのではなく、相互に影響しあいながらひとつのシステムを構築しているという考え方)を構成している人たちに、どのような影響を及ぼしているのかまで考えないし、そもそもそういう構造は消費者からは見えないようになっているのだ。

 その理由のひとつにメディアの問題がある。食産業の広告宣伝費によるメディアに対する圧力や政治献金を通じての政治に対する影響力のために、この問題の多い食システムが、あからさまに批判されることはほとんどない。時おり、生産者や流通業者、小売業者などシステム個別の問題だけがクローズアップされる程度だ。

 そのような事情がある中で、メディアにそれを明らかにすることを求めるのは、非現実的だ。日本でも東日本大震災後、電力業界によるマスメディア支配の構図が、さんざん取り沙汰された。

 電力業界は電気事業連合会や電力各社がマスコミや学者、官僚、政治家に広告費や研究費、天下り受け入れ、政治献金などを通じて原子力政策を推進させ、批判をさせない構造を作ってきた。その構図が震災による福島第一原子力発電所の事故によって明らかになった。