食システムにおいても構図は同じだ。電力業界を圧倒する膨大な広告費を使い、政治献金を行い、大学や研究所への巨額な寄附行為を行なっている。そうして我われは食の本当の姿を知ることもできず、法制度もそれを正当化し、業界に有利な論文まで書かせる。

 こうしてシステムの問題は消費者の意識に上ることもなく、貧困者の生活のみならず、消費者自身の生活までをもジワジワと蝕んでいっているのだ。

われわれは食の現状についてあまりに無知だった!

 情報には偏った報じ方をされることよりも、報じないことのほうがより危険な場合がある。報じられさえすれば、例えば食の安全をめぐって、安全かそうでないかの価値判断が生まれる。

 しかし、まったく報じられないとその価値判断さえ行われなくなり、消費者は躊躇することなく自己の欲求に従って、目の前の食品に飛びつくことになるだろう。

 この意味でメディアが業界圧力に逆らえず、食システムの構造問題を報じないことの罪は重い。

『食の終焉』を通じて著者ポール・ロバーツが明らかにする食のシステムの実態は決して、読んでいて気持ちいいものではないかもしれない。しかし、読み進めるうちに、どれだけわれわれが食の現状について、重要なことを何も知らされてこなかったかを、思い知るはずだ。

  


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