昨年東京都が実施した「都民生活に関する世論調査」によると、「今住んでいる地域に今後もずっと住みたい」という23区民は77%。エリア別にみても、押しなべて高い定住意向が示されている。では、実態はどうか。今回は、国勢調査のデータを見ながら「定住」と「移住」にスポットを当てて地区ごとの特性を見て行こう。
住みにくかった? 憧れの街
「生まれてから一度も引っ越しをしたことがない」。究極の定住者ではあるが、東京23区に住む20歳以上の人の中に5%しかいない。少しハードルを下げて、20年以上現在の場所に住み続けている人(以下、「20年以上の定住者」と呼ぶ)は36%。ほぼ3人に1人だから、上述した8割近い定住意向との差は大きい。住み続けたいとは思っても、そう簡単ではないのが現実のようだ。
20年以上の定住者の割合がいちばん高いのは台東区。以下、葛飾区、足立区、北区、墨田区と下町が続く。「生まれも育ちも葛飾柴又」が謳い文句の寅さんは、住所不定のフーテン暮らしながら、心の中はいつも下町の人たちと繋がっている。下町人情と定住性。この2つの間には、切っても切れない関係がある。
一方、低い方は中央区、港区、世田谷区、目黒区、千代田区の順。都心3区が顔を揃えているが、ここには人口急増の影響がある。例えば中央区は、過去10年間の人口増加率が69%。港区、千代田区も3割前後の伸びだ。だから、居住期間が短い人が多くなるのも無理はない。ところが、世田谷区と目黒区の人口増加率は、23区の中では低い方に入る。にもかかわらず定住者が少ない。世田谷、目黒というとリッチな山の手の代表選手だが、憧れの街は意外と住みにくいのかもしれない。