「同じ職場の既婚女性が妊娠・出産すると、シフトのシワ寄せは自分たち独身女性や男性医師に来る」あるいは「せっかく責任あるポストに就いても、妊娠してフルで手術に入れなくなったり、放射線治療に従事できなくなったりして周囲に“迷惑をかける”女医がいる」などと独身女性医師が不満を抱えれば、一方の既婚女性医師は、周囲の冷たさに反発を感じたり、もしくは申し訳なさでいっぱいになって離職したり、子どもを持つことを諦めて仕事に没頭したりする事態に追い詰められてしまう。

 特に大学病院はその傾向が強い。

 女性同士が反目し合わなくても済むように、人員配置やシフトの調整をするのは本来、経営陣の義務なのだが、反目は上には向かず、「お互い」に向いてしまうのだ。

 既に医師になっている女性たちは、女性受験生差別の現実を乗り越えて、見事合格を手にした「勝者」であることも、差別容認発言が多い背景にはあるかもしれない。「自分たちは敗者ではない」というプライドが、差別に対する怒りにブレーキをかけているのではないか。

 周囲の男性医師たちも、本来なら、女性医師が離職したり、反目し合ったり、自分たちに「シワ寄せ」が来て疲労困憊(ひろうこんぱい)しなくてもいい職場環境作りを経営陣に訴えるのが筋のはずなのだが、なかなかそうはならない。「だから“女の子”はダメだ」と切り捨て、過酷な労働環境で働き続けることを肯定する。

 一般企業では既に、働く者の権利として確立され、働く人たちにも受け入れられている概念が、医療界ではまだまだ受け入れられていない現状がある。

医師の自殺率は
一般人の1.3倍

「医師は『聖職』だから仕方がない」「医師はエリート、弱者ではない」と医師たちも社会も、医療現場の働き方改革が進まないことを、なんとなく容認する空気があるが、もっと危機感を持つべきだ。

 2005~06年に行われた調査によると、医師の自殺率は他の職業のおよそ1.3倍にのぼる。自殺まで行かなくとも、疲弊して、心身を病んでいる医療従事者の割合は大きいといわれている。