これについてAlibabaは、2011年2月に発生した不正事件以降、それまでの成長重視の経営から、出店企業の質向上に軸足を置く戦略に転じたためと説明しています(a major initiative toward improvements in the quality of the buyers' experience on the company’s online marketplaces)。

 長い目で見れば品質が永続的な成長に結びつくはずですが、短期的にはこれまでの有料会員数増加を主眼とした経営(Alibaba.com’s business in the early years was driven by a focus on rapidly increasing the number of manufacturers, trading companies and wholesalers that pay a subscription fee)に比較して、成長の鈍化が起きていきます。

 これを最大の理由として、Alibabaは2月21日、香港株式市場からの上場廃止を表明しました。提示された株価13.75香港ドルは、直前60日の株価平均に60.4%のプレミアムが乗せてあり、また2007年11月にAlibaba.comが上場したときの株価と同額でもあります。

 既存株主からすれば、直近の株価に6割もプレミアムが乗せられ、かつ上場時の株価に等しいとあらば、納得性も高まるでしょう。すでに第3者による株価の適正評価も出ているため、Alibaba.comの上場廃止は時間の問題とも思えます(香港の規制では、少数株主の75%超の賛成と、10%未満の反対が条件)。

 では、Alibabaグループからこの事象をとらえるとどう映るでしょうか。買い取る株価は発行株式の27%程度でも、相応の時価総額のある企業です。総額約2,000億円相当の資金が必要となります。このタイミングで非上場化する真の意図が果たしてどこにあるかは、じつは定かではありません。

 Yahoo! Inc.はAlibabaの40%の株式を保有していますが、これをAlibabaが自己株式として買い取る準備であるとか、あるいは逆に子会社のAlibaba.comを上場廃止にして、親会社のAlibaba Group Holdingを上場させる流れとの噂もあります。後者の場合には、淘宝網などグループの他企業も企業価値評価に含まれるため、業績不振が伝えられる大株主Yahoo!にとっては、ハッピーな結末となるでしょう。