文化の「民主化」をリードし、現代が抱える課題をも先取りしてきた堤氏と、セゾングループを支えた数多くの立役者たち。先の見通せない時代だからこそ、その実像に迫ることは大いに価値があるはずだ。

本書の要点

(1)本書は、セゾングループ各社の栄光と苦闘の軌跡をたどりながら、堤清二の人間像に迫っていく。
(2)無印良品は高級ブランドブームのアンチテーゼとして誕生した。「消費者の自由の確保」を核とした無印商品は、堤の思想の結晶といえた。
(3)赤字百貨店だった西武百貨店は、堤が打ち出したイメージ戦略などが奏功し、1987年度には売上高業界1位となった。しかし、堤の理想を実現するためのこだわりがコストを押し上げ、経営の足かせとなった。

要約本文

【必読ポイント!】
無印良品
◇無印良品は堤清二の「自己否定」から生まれた

 セゾングループが生み出した先駆企業の栄光と苦闘を、本書は克明に描き出している。無印良品を展開する良品計画、西武百貨店、パルコ、ロフトやリブロなどの専門店、グループ解体の序章となった西洋環境開発を中心としたホテル・レジャー産業。つづいて、吉野家を買収し、ファミリーマートを生みながらも、堤清二が一定の距離を置こうとしたチェーンオペレーション。本書はこうした順に構成され、最後に堤清二という人間像に迫っていく。本要約では、無印良品、西武百貨店、そしてグループ解体劇を中心にとりあげる。

 では、堤が53歳という経営者人生の後半戦で生み出した無印良品が最初にくるのはなぜなのか。それは無印良品が、堤が痛烈な自己否定の精神を発揮し、その思想の結晶としてつくり上げたものだからだ。

◇「反体制商品」の誕生前夜

 セゾン文化の絶頂期である1980年、堤が世に放ったのが無印良品である。ロゴマークがついていれば商品が高く売れる。そして高級ブランドを身につけた人を見た消費者が、焦りと羨望から真似をする――。こうした消費社会に堤は異議を申し立てた。ブランド至上主義の行き詰まりを予見した堤は、無印良品を「反体制商品」と呼んだ。無印良品は、西武百貨店を通じた高級ブランドブームの火付け役となった堤の、自己否定そのものといえた。