小泉が激怒し公認を取り消した
杉村太蔵当選の舞台裏
彼は日本の「ローマ皇帝」になり、パンとサーカスを実践しようとした。パンの部分が、小泉政権のメインテーマだった郵政民営化でした。小泉さんは、郵政民営化が経済の“血流”をよくすると信じていた。そして、サーカスの部分は郵政民営化解散でしょう。郵政民営化法案を国会に提出するにあたり、そのプロセスには相当苦労した。提出できたのはよかったが、衆院はわずか5票差での可決、参議院では否決された。

──当時、衆議院の郵政民営化特別委員会の委員長が二階俊博・現自由民主党幹事長で、山崎さんが筆頭理事を務めていました。
山崎 これは憲政の常道に反するのですが、小泉さんは、参議院で死んだ法案を生き返らせるために、衆議院を解散させるという禁じ手を断行した。「郵政民営化に反対した議員を全て落選させる」と言って、“刺客”という名の対抗馬を立てた。負けたらおしまい。民営化自体が吹っ飛ぶ、完全な空中ブランコです。そんな刺客の1人が、今をときめく片山さつき女性活躍担当大臣。国会で超党派でいじめにあっている人ですよ。
刺客といっても千差万別で、党本部は選挙に苦労した。今、タレントとして活躍している杉村太蔵君も、当初は「刺客」扱いだったのです。本人が強く「刺客」になることを希望したのだけれど、あまりに弱小候補で擁立する小選挙区がなかった。
それで、僕の地盤だった「福岡で引き取ってくれないか」という要請があり、福岡1区で擁立することにした。福岡県連の選考はなんとか通ってひと安心したのだが、党本部に上げたところ、「待った」がかかった。
小泉さんが、杉村君の書いた郵政民営化に関する論文を読んだところ、完璧だったという。それで小泉さんがけげんに思って、杉村君を東京に呼んで、「これは、君が書いたのか?」と、質問したら、「竹中平蔵先生の論文を丸写ししました」と答えた(苦笑)。
小泉さんが激怒し、当たり前ですが公認は取り消し、彼は路頭に迷った。武部さん(武部勤元幹事長)が哀れに思ったんでしょうね。同情して、北関東ブロック比例区の末席に名前を入れてあげた。絶対に当選しないはずだったのですが、自民党の比例候補は全員当選して、なおかつ票が余って、最下位ランクの杉村君も当選してしまった。