「1秒単位」で消費者の心が離れていく時代。だからこそ、PR動画もプレゼンも文章も営業トークも、「1秒でつかみ、1秒も飽きさせない」ことが、売上に直結する。

『家、ついて行ってイイですか?』『吉木りさに怒られたい』などの仕掛け人で、テレビ東京制作局ディレクターの高橋弘樹氏が、1秒で「惹きつけて」、途中1秒も「飽きさせず」、1秒も「ムダじゃなかった」と思ってもらえるコンテンツの作り方全思考・全技術を明かした新刊『1秒でつかむ「見たことないおもしろさ」で最後まで飽きさせない32の技術』が、発売前から注目を集めている。

本記事では、新商品開発の最大の課題である「いま、成功している商品やサービスとの差別化」を実現させる方法を、事例とともに特別公開する。(構成:編集部・今野良介)

「もっと、こう、差別化できないの?」

『1秒でつかむ』という本で紹介しているコンテンツ作りの戦略は、すべて、正攻法ではなく、既存の価値観に挑戦する類のものばかりです。おそらく、「なんでそんなことしなくちゃいけないんだよ」という疑問が当然のように立ち上がってくると思います。

それは、自分という人間が、常に「挑戦者」としての立ち位置におかれているからです。もしあなたが同じ立場にいるのなら、必ず役に立つはずだと信じているからです。

何よりもまずテレビ東京という組織が、すでに述べたように圧倒的に金がない。だから、正攻法では敵わないという当然すぎる前提が、常に、何を考えるにも、「前略」という手紙の冠省のようにつきまとってくるのです。

そして2つめに、自分の「年代」があります。

テレビには、ドキュメンタリーならば『ノンフィクション劇場』を立ち上げた日本テレビの牛山純一、テレビ東京では「ピアノを弾きながら死ねればいい」と言ったジャズピアニスト山下洋輔の文学的表現をガチで受け取り、1969年に大学騒動で機動隊が取り囲む早稲田大学前で演奏させるといったクレイジーな演出で知られる田原総一朗、フジテレビなら、ドラマにもなった「白線流し」のドキュメンタリーなどで知られる横山隆晴など、「自分のおじいさんかい!」っていうほど、もはや歴史上の人物で、自然と敬称略してしまうほど上の世代の頃から脈々と続く歴史の積み重ねがあります。

バラエティ分野でも、フジテレビなら自分が小さい頃見てきた『めちゃイケ!』の総監督で独自の「突っ込みテロップ」を開発した片岡飛鳥さんという演出家。日本テレビなら、これも子どもの頃大好きだった『進め!電波少年』を作った土屋敏男さん。フリーの方でも、これまた子どもの頃毎週楽しみにしていた『料理の鉄人』や『とんねるずのハンマープライス』などケレン味あふれる演出が格好良すぎる田中経一さんなど、「自分のお父さんかい!」っていう世代の人たちが築いた歴史があります。ちなみにこの人たちは、お会いしたことがありませんが、いまだに現役だったりします。

こうした先人たちが産み出した、当時最先端だった仕掛けが、現在では定石として蓄積され、歴史を築き上げています。それゆえ、テレビは「どこかで見たことある番組」が多くなるのだと思います。

回りくどくなりましたが、(1)組織に金がなくて(2)自分の先人たちが築いた歴史がある。その2つが、「新しいおもしろさ」を作り出すために、ちょっと労力のかかる戦略が必要な理由です。

これは、必ずしもテレビ業界やテレ東の話だけではないはずです。

リーディングカンパニー以外のあらゆる企業が、リーディングカンパニーに対して常に資金面で劣勢に立たされた戦いをしなければなりません

また、あらゆる商品やサービスには、そこに至るまでの歴史的な経緯が存在します。

「いま、成功している商品やサービスとの差別化」は常に、新商品開発の最大の課題になるはずです。

「もっと、こう、差別化できない? 金はないけど」

「なんか、めんどくさそうだな」と思ったかもしれません。

でも、そんなことないです。「金がない」という一見ネガティブに見える要素を、ポジティブに変えればいいのです。

まず、そもそも、「金がない」というのは、裏を返せば、失敗しても大した金額じゃないということです。テレ東の予算は、他局様に比べれば誠にスズメの涙ですから、失敗しても、あまり良心の呵責がありません。「視聴率が悪ければ、翌日は会社に行かなければいいか……」くらいにしか思っていない人もいると思います。

そうした「金がない」ことを「武器」にして、見たことないおもしろいものを作るための「金銭的な作戦」こそが、「バランス崩壊力」です。

予算書をじっくり眺め、予算のバランスを崩壊させるのです。

たとえば、ゴールデン番組を1本作るとして、他局様の予算が3000万円で、テレ東の予算が1000万円だったとします。

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