その後、ボーダフォン(Vodafone)の日本法人を買収して携帯電話事業に進出、現在に続くソフトバンクの中核事業の1つに育て上げた。日本のボーダフォンの前身はジェイフォン(J-Phone)である。ジェイフォン、ボーダフォン時代を通じて、NTTドコモとKDDIの大手携帯キャリアに押されて鳴かず飛ばずだった通信キャリアの買収は、当時「高すぎる買い物」「失敗必至」と言われた。しかし、いち早くiPhoneに目を付けて契約者数を拡大したことから、上位2社に恐れられる存在にまでなった。

ガラパゴス市場に先んじて
iPhoneを導入した先見性

 ガラパゴスと言われたように、日本の携帯キャリアは日本の独自機能、独自規格を貫き、日系携帯端末メーカーはいわゆる「全部入りケータイ」を大量供給していた。こうしたビジネスモデルでないと商売にならなかった時代に、日本独自の機能は一切省き、当時の高機能携帯には当たり前だった「ワンセグ」も「おサイフケータイ」も内蔵しないiPhoneを日本に導入したのは、極めて大きなチャレンジだっただろう。

 現在、日本は世界中で最もiPhoneユーザーが多い市場になっているが、これもソフトバンクの仕掛けによるものだったと言える。

 こうして見ると、ソフトバンクと創業者の孫正義氏が日本のIT産業において果たした役割は極めて大きいと言える。にもかかわらず、一般の日本人の評価がそれほど高くないように思えるのは、育てた企業の規模と産業に与えた功績について論じられるときではなかろうか。

 シャープの伝説のエンジニアと言われる佐々木正氏は、若き孫正義氏を見出し高く評価したと言われるが、一般の評価としては、松下電器産業(現パナソニック)の松下幸之助氏やホンダの本田宗一郎氏のように「尊敬される経営者」というより、「確かにお金は儲けているけど……」というエクスキューズをつけて語られることが多いように思える。