12月16日、水道法の一部を改正する法律案が衆議院本会議で再可決され成立した。「水道民営化」と誤解する人も多いが、これはいわゆる「民営化」ではない。しかし、実態は「民営化」よりもタチが悪いものだ。その問題点などを解説する。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)
水道法改正は
「水道民営化」ではない
多くの反対や疑問の声が上がる中、12月6日、先の通常国会から継続審議となっていた水道法の一部を改正する法律案が衆議院本会議で再可決され成立した。
今回の水道法改正の目玉は、水道施設運営権を設定して民間企業による水道施設運営等事業を可能とすること。この点について世間では「水道民営化」とされることが多い、というよりほとんどのようだ。
しかし、これは「地方公共団体が保有する水道インフラを使って、民間企業がある程度自由度を持って事業を行う仕組み」であって、インフラごと民間企業に売り渡すいわゆる「民営化」ではない。
どうも「民営化」という言葉が独り歩きをして、さまざまな誤解が生まれ、そうした誤解に基づいた奇妙奇天烈(きみょうきてれつ)で頓珍漢(とんちんかん)な議論が、さも正しいかのようにまかり通っているようである。
このことについては制度論の観点も含め、拙稿『水道法改正案は「民営化案」ではないが別の大きな問題がある』で解説し、併せて水道法改正の問題点についても分析しているのでそちらを参照いただきたい。
そこで本稿では、水道施設運営権の設定による水道施設運営等事業(以下「水道コンセッション」という)の仕組みとその性格、問題点、なぜ懸念する必要があるのかについて概説するとともに、よくありがちな水道コンセッションを巡る誤解等について、何がどう間違っているのかについて解説してみたい。