2011年、対中コメ輸出は福島第一原子力発電所事故の影響を受け「ゼロ」となった。それ以降、中国は福島県を含む12都県(現在は10都県)からの農産物の輸入を停止した。だが、農産物の中でもコメは例外となったこともあり、2015年には568トンと大きな伸びを見せ、その後も300トン台前後で推移した。2007年の“輸出元年”に比べれば、4倍以上の伸びだ。

 伸びの要因として考えられるのは、訪日中国人旅行者の急増だろう。2017年には735万人が日本を訪れ、日本のコメを食べた。炊飯器が売れるのもおいしい米を食べたいからにほかならない。だが、中国で日本産米は市場を拡大させることができるのだろうか。

日本産米と区別がつかない

 筆者は2005年に上海で、聞き酒ならぬ「聞き米の会」を主催したことがある。黒竜江省、江蘇省、新疆ウイグル自治区、そして日本の最高級米である魚沼産コシヒカリの4種類の米を、上海に出店する高級すし店の料理長に炊いてもらい、「どれが日本産米なのか」を在住の日本人女性たちに当ててもらったのだ。

 なぜ、こんな企画を上海で行ったかというと、当時、居住していた上海で流通する中国産米のジャポニカ種が「格段においしくなった」と実感したからである。案の定、参加者たちは「これが日本米だ!」とはっきり言い当てることができなかった。

 それから十数年が過ぎ、中国の米はさらにおいしくなった。その理由のひとつは、品種改良と精米技術の向上だ。精米機の国内最大手メーカー・(株)サタケ(本社:広島県・東京都)が1998年から中国で精米機・選別機の製造販売を行っているように、「中国産米が日本産米並みにおいしくなったのには、良質な精米機の普及もある」(日本産食品の販売業者)という。

 余談になるが、筆者は新疆ウイグル自治区のタリム盆地北部で、日本の合鴨農法による稲作現場を取材したことがある。アヒルの水かきが泥をかき混ぜ、雑草や害虫はアヒルの餌となり、その糞が田んぼの養分となる――。そんな循環型の農法は日本から伝えられたものだった。

「おいしいコメ」を追い求める中国の生産者に、日本の専門家たちは惜しみなくその技術を移転した。振り返れば、かつて日本人駐在員やその家族は“米・味噌・醤油”をトランクに詰め込んで往復したものだったが、“日中合作”のおかげで、いつの間にかそんな苦労はなくなっていた。