2019年になりました。本年も、モバイルを中心としたテクノロジー時代の話を、皆様と考えていこうと思います。引き続きのご愛読、よろしくお願いいたします。

 年頭のご挨拶もそこそこに年末の話に戻るのもおかしな話ではありますが、今回はバークレーでiPhoneと財布をすられてしまい、それを取り戻した話をします。

 それにしても、年末の日本への帰省前というのはいつもバタバタしており、なんらかの事件が巻き起こります。

 2017年12月には帰国する直前に、公園の脇に停めていたクルマをぶつけられてしまいました。夕方なんとか修理工場へ運び込むことができ、米国に戻る3週間後までには相手の保険で修理が済んでいるだろうと思っていました。

 ところが「Deemed Total Loss(全損扱い)」という手紙が届いており、廃車になってしまいました。そのため、新年から中古車探しをしなければならなくなった、というわけです。

 そして2018年末は、ちょっとした気の緩みから、事件が発生してしまいました。

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iPhoneやAndroidでは、端末が見当たらない場合、その位置を示してくれるサービスがあります。しかし、盗難された場合などは追跡にリスクもともないます

7年もアメリカにいて、ついに油断をしてしまう

 12月30日のお昼に、久々に会った友人と知角野デリでランチを取っていました。12月にしては晴れた暖かい日で、「パークレット」と呼ばれる道路の駐車スペースを転換して作られた屋外の席に座っていました。

 そのとき、近くのベンチにぽんと置いた家人のコートの中に、iPhoneと財布を入れっぱなしにしていたのです。今ふりかえると、7年も米国にいて、そんな真似をしたことはなかったのですが……。

 話に花が咲いているなかで、この前行ったお店の話だったか、知り合いのInstagramの写真の話をしようとiPhoneを探したら、手元にない。入れていたはずのコートにもない。また、普段はiPhoneと常につながっているはずのApple Watch上でも、iPhoneとの接続がない状態と表示されていました。

 そこで、「盗られた!」と気づきました。

追跡を開始する前に

 12月31日の飛行機で日本に帰省しようと考えていた前日の出来事で、昨年と同じように面倒な事件が発生しました。iPhoneが盗られた場合、皆さんならどうするでしょうか。電池がきちんと残っているなら、取りあえずGPSで追跡です。

 筆者のiPhoneの「iPhoneを探す」アプリを開き、家人のiCloudアカウントでログインします。すると、自分のiPhoneの電源が入っていて通信ができる状態であれば、自分の位置情報が表示されます。すると、デリの1本裏手にあるとおりを示していました。そしてリアルタイムに移動していたのです。

 そこで、まずは「iPhoneを探す」アプリで、「紛失モード」をオンにしました。画面にはメッセージと連絡先の電話番号、そして通話ボタンがあられ、持ち主への連絡以外できなくなります。のちのち、このモード設定が功を奏します。

家族のiPhoneを使って追跡開始

 そうした上で、GPSでの位置情報をにらみつつ、相手に見つからないように追跡を開始します。デリの周りにもお店が建ち並び、年末の週末と言うことで人もそこそこ賑わっているエリア。老舗のカフェのはす向かいあたりには、顔なじみのホームレスが3人談笑していました。

 まさに、「iPhoneを探す」の地図の在処は、その談笑している面々の地点を指していたのです。しかも、手元のApple WatchとiPhoneとの接続が復帰しており、まさに至近距離に盗られたiPhoneを捉えました。

 そこで、道の反対側から筆者のiPhoneから盗られたiPhoneに電話をかけます。すると、一人の背の高い白人男性がそわそわと移動をし始めました。

 「あの人かもしれない」

 そうして早足で追いかけ始めましたが、一度は見失ってしまいます。しかも、追跡中のiPhoneとの接続も途切れ、電源を切られたかと思いました。

 ちょうど接続が途切れたあたりには、無料Wi-Fiを提供しているカフェがあり、以前使ったことがありました。しかしWi-Fiはブラウザで認証を取らなければインターネットへの接続を開始できません。そのため、電波は拾ったが認証されていない状態となったのかもしれません。

ついに発見

 シグナルを見失ってしばらく停滞状態に陥りました。電源を切られてより遠くへ逃げたのではないか。あるいはどこかに捨てて逃げられてしまったのではないかなど、嫌な予感が募ります。

 そのとき、盗まれたiPhoneから着信がありました。「紛失モード」のボタンを押したのだと思います。電話の主は「I just found this phone. (今この電話を見つけたんだ)」と話していたため、家人は「I’m tracking you. Don’t move. (追跡している。動かないで)」と伝えます。

 電話が途切れると、再び「iPhoneを探す」アプリに位置情報が現れ、なんと先ほどまでいたデリの方に戻っていたではないですか。

 急いでカフェからデリへ移動しながら、さっき見かけた男を探します。ついに、ランドリーの中に立っていた男を突き止め、無事iPhoneと財布、その中身を全て無事に取り戻すことができました。

 こうして、スマートフォンやクレジットカードなどの停止などの面倒な手続きをすることなく、日本に帰省できたわけです。

何が起こるかわからないので、本当は追跡しない方がいい

 日本でも、誰かのiPhoneを借りて自分のiPhoneを追跡することは可能です。またApple WatchからiPhoneの音を鳴らすことで見つけることもできます。

 今回の場合、見かけたことがある人物だったこともあり、追跡の上、iPhoneを返してもらうべく接触しました。

 しかしこれが隣町のオークランドだったら、たとえ「iPhoneを探す」機能で取っていった相手を特定できていたとしても、10万円以上のiPhone XSを諦めていたでしょう。

 その理由は、相手が銃を持っているかもしれないからに尽きます。

 持っていった人が地元のホームレスで、銃で武装している可能性が限りなく低かったため、今回のように交渉して取り戻すことができました。しかし見慣れない相手で場所が場所なら、撃たれに行くようなものです。

 海外旅行などでこういう場面に合う可能性もなくはないはず。そしてご紹介したとおりに、テクノロジーの機能によって解決を試みる方法も存在しています。ただし、治安の悪さに起因する身の危険までは、テクノロジーでは解決してくれないのです。


matsu

筆者紹介――松村太郎

 1980年生まれ。ジャーナリスト・著者。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)。またビジネス・ブレークスルー大学で教鞭を執る。米国カリフォルニア州バークレーに拠点を移し、モバイル・ソーシャルのテクノロジーとライフスタイルについて取材活動をする傍ら、キャスタリア株式会社で、「ソーシャルラーニング」のプラットフォーム開発を行なっている。

公式ブログ TAROSITE.NET
Twitterアカウント @taromatsumura