完全なベジタリアンになる必要などない
ただ週に1日か2日、肉を食べない日にすればいい

神保 この本を読んで問題を理解し何かしたいと思った読者や消費者には、どのような行動が可能でしょうか。普通の人々にできることとは何でしょう。

ロバーツ いくつかの視点があると思います。1番目は、自分を消費者だと考えるのをやめることです。約1世紀にわたって私たちは消費者として位置づけられてきました。大半の人は知らない間に食べ物を作る側から消費する側に回されていたのです。そして、私たち自身もこれを積極的に受け入れました。

 ですから、まずはもういちど生産者に返ること、そして少なくとも自分で何か食料を作ることが、解決への道筋の第1歩になると思います。それは庭で栽培してもいいし、市民農園に参加するのもいいでしょう。外食ばかりしている人は、料理するだけでもいい。

 今は家でもまったく料理をしない人が増えています。私たちは自分を生産システムから完全に切り離してしまったのです。お店で食料を買ってレンジで「チン」するだけです。その食べ物がどこで作られたかなんて考えもしなくなりました。だから1歩でも2歩でも生産チェーンにもどることが、重要な心理的出発点になると思います。

 2番目のポイントは、食についてもっとよく知ることです。たとえば「この食べ物はどこから来たのか。なかには何が入っていて、誰が作ったのか。どれくらいの旅をして食卓にたどり着いたのか。自分はこれが本当に食べたいのか、または食べる必要があるのか」などと自問することです。

 もっとシンプルな食べ方をし、なるべく食のチェーンに頼らず、できるだけ加工されていない物を食べることを学ぶ。肉の量も減らす。私はベジタリアンではありませんが、自分が食べる肉には注意しますし、その量も減らしています。肉は必ずしも栄養面で最良な食品ではないし、むしろ食べ過ぎると良くないことを知っているからです。

 肉は大量の資源を消費します。1ポンド(約0.45キロ)の牛肉を生産するのに20ポンド(約9.07キロ)の穀物を必要とします。つまり肉の消費量が増えれば、より多くの土地を耕し、より多くの水を使うことになるのです。

 米国の人々はこうした議論に耳を貸そうとしません。私は彼らに、完璧なベジタリアンになる必要はなく、ただ週に1日か2日を肉を食べない日にすればいいんだと説明しています。ちょっと肉を減らしたからといって、世界が終わるわけじゃないでしょ。無理のない範囲で少しずつ肉の摂取量を減らせばいいだけなのですから。