中国の軍事的台頭が
米国とロシアを和解させる

 米国防総省(ペンタゴン)は中国を警戒し、相変わらず中国一辺倒の国務省(=外務省)との対立が深まります。2016年の大統領選挙は、国防総省と結ぶトランプVS国務省と結ぶヒラリー・クリントン(前国防長官)の戦いとなり、トランプの勝利によってアメリカの外交方針は大転換したのです。

 日本にも中国を警戒する政権が生まれていました。安倍晋三首相はインドや豪州を含む「対中包囲網」の構築(安全保障のダイヤモンド構想)を唱え、当選直後のトランプのもとに駆けつけました。これにプーチンのロシアが加われば、この構想は完成します。そのためには、「のどに刺さったトゲ」を抜く必要があるのです。

 プーチンも実は中国を警戒しています。ロシアが一番恐れているのは、中国の人口圧力です。バイカル湖以東の広大なロシア領シベリアの人口はわずか620万人、千葉県の人口とほぼ同じです。

正しい歴史教育と
地政学的利害関係とは両立できる

 一方、長い国境を接する中国東北部(旧満州)の人口は、1億2000万人。水が高きより低きに流れるように、中国からシベリアへの人口流入が止まりません。だから中国との経済協力は、ロシアにとって「両刃の剣」なのです。北方四島にもすでに中国系移民が流入しています。

 第1回「中国の民主化を期待し暴走させた欧米の「誤算」は何に端を発するか」で触れたように、中国は北極海ルートを押さえたいのです。中国の地政学的な台頭が、プーチンのロシアと安倍の日本とを接近させているのです。

「大戦末期にソ連が日ソ中立条約を破って日本を侵略、満州や南樺太、千島列島に住んでいた多くの日本人を殺害・暴行し、労働者としてシベリアへ抑留したことを忘れるな」という意見があります。これは正しい意見です。スターリンによる国際法違反と戦争犯罪は明白であり、その事実関係を、日本でもロシアでも歴史教育できちんと教えなければなりません。

 米国による原子爆弾投下や東京大空襲もまた、明白な国際法違反の戦争犯罪です。これらについてきちんと語り継ぐことと、良好な日米関係を維持することとは両立できるのです。ロシアに対しても同じことです。