韓国で罹患率1位のがんが
「甲状腺がん」だった理由

 がんには、発がん後の進行が非常に早いもの、遅いもの、また進行しないもの、一部退縮するものもあります。多くの胃がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がん、喫煙歴のない人の肺がんは、進行がゆるやかで症状が出るまでの期間が長く、定期的に検診を受けていれば症状が出る前にがんを発見できる可能性が高いのですが、白血病、悪性リンパ腫、喫煙者が罹患する肺がんなどは、発病してから症状が出るまでの期間が数ヵ月から数週間と短く、早期発見は困難です。

 一方、甲状腺がんや前立腺がんをはじめ、進行が非常に遅く、寿命に影響しないがんを診断(過剰診断)し、治療することもあります。一例を挙げましょう。

 韓国では1999年から大腸、胃、肝臓、乳房、子宮頚部のがん検診を無料もしくは安価で行う国家的ながん検診プログラムが導入されました。甲状腺がん検診もオプションとして3000~5000円程度で受けられるようになり、受診率が飛躍的に向上した結果、20年弱で甲状腺がんの罹患率は15倍に上昇。2009~14年までがん罹患率の第1位は甲状腺がんでした。これほど急激にがんが増えるのは進行の遅い小さながんを見つけていたとしか考えられず、社会問題化しました。2014年に医師のグループが過剰診断を警告する声明を出し、甲状腺のがん検診は中止され、罹患者は急激に減少していったのです。

 ただ、過剰診断になるかどうかは、がんが発見される年齢にも左右され、高齢になるほど過剰診断の影響が強く出ます。また、どのようながんが致死的ながんに移行するかは多くの場合、判別できません。がん検診の限界を理解した上で、早期発見・早期治療につながる検診を受けることが大切です。