今年末にも開業見込みといわれる「相鉄・JR直通線」の工事が大詰めを迎えている。といっても、実は線路を新設するのはたった2.7kmの区間のみ。そのほかは、既存の貨物線などを縫うように走る電車なのだ。実は東京圏や大阪圏などの大都市圏では、この「貨物線の旅客転用」が輸送力アップの秘密兵器として活躍している。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)
相鉄・JR直通線工事が大詰め
線路新設は2.7kmのみ
相模鉄道西谷駅とJR東海道貨物線横浜羽沢貨物駅を結ぶ「相鉄・JR直通線」の工事がいよいよ大詰めを迎えている。工事は2010年3月から始まり、当初2015年4月開業を予定していたが、貨物列車の運行を確保しながらの工事に手間取り、開業時期が2度延期。現在は「2019年度下期開業」を目指して工事が進められている。正式な発表はされていないが、昨年末から年初にかけて2019年12月の開業を軸に調整中と複数紙が報じており、今度は“三度目の正直”となりそうだ。
現時点で公式発表されている運転計画は、最大で1時間4本程度の列車がJR新宿駅方面に直通するということだけだが、報道によると「相鉄・JR直通線」はJR埼京線と相互直通運転を行い、朝ラッシュ時間帯を中心に川越線まで乗り入れる計画だという。もっともこれは、JR大宮駅の案内板に「相鉄線方面」の準備がされたり、相鉄が直通用に新造した12000系車両の行先表示に川越線の駅名が収録されていることから、鉄道ファンの間では「公然の秘密」として知られている。
この直通運転計画のキモは、新規に建設されるのは相鉄西谷駅と貨物線の横浜羽沢駅を結ぶ約2.7kmのトンネルだけで、その先はさまざまな路線を渡り歩いていくことにある。まず横浜羽沢駅から新川崎駅付近まで走行するのが、1979年に開業したJR東海道貨物線で、一部を除いて旅客列車は使用しない貨物専用線である。
貨物線は新川崎駅付近で横須賀線に合流する。鶴見から武蔵小杉を経由して品川に向かうこの線路も、元々は貨物線だった。現在は東京から大船まで別々の線路を走る東海道線と横須賀線だが、大昔は横須賀線の列車も貨物列車も全て東海道線の線路を共有していた。さすがに線路が足りなくなったので、1929年に貨物線を新設して貨物列車を分離した。現在の形になったのは1980年。旅客列車の本数を増やすために横須賀線が東海道線から独立して貨物線を使うことになり、貨物列車は新設の貨物線に玉突きされたというわけだ。