問題は、洋服や化粧品の生産は機械化することで労働生産性が高まる余地が大きいが、美容院は労働集約型産業なので、人手がかかるという点だ。つまり、化粧品を1万円分買っていた客が、美容院で1万円使うようになると、そのために必要な労働者の数は増えてしまうのだ。

 一国の労働者の数が増えないとすると、需要が化粧品から美容院へシフトすることで、生産できる財・サービスの総量が減ってしまう(GDPが減ってしまう)ことになりかねないのだ。もちろん、実際にGDPがマイナスになることはないとしても、成長率を押し下げる要因としては非常に重要だろう。

少子高齢化も始まり
中国でも影響が本格化

 日本では、すでに少子高齢化の影響で労働力不足が顕著になっており、労働力不足が経済成長率を抑えてしまうことが懸念され始めている。少子高齢化で労働力不足になる理由は2つある。「若者の比率の低下」と「高齢者の消費の特徴」だ。

 少子高齢化によって、働き盛りの若者が大いに減り、生産せずに消費だけをする高齢者があまり減らないので、少数の若者が作った物を大勢の高齢者が奪い合う形となる。需要は十分あるのに供給が追いつかないという、従来の日本経済と全く異なる成長の制約要因が重要となるわけだ。

 これに加えて、若者が自動車を買う代わりに高齢者が医療・介護サービスを受ける、という変化もある。ここでも自動車生産より医療・介護の方が労働集約的であるという点が重要となる。

 上記のように「国民が豊かになると、化粧品から美容院に需要がシフトして経済成長率が下がる」のと似たようなメカニズムで、「国民が高齢化すると、自動車購入から医療・介護に需要がシフトして経済成長率が下がる」ということが起きるのだ。

 中国の場合、日本より少子高齢化のタイミングが遅いから、この影響はまだ出ていないのだろうが、今後は中国でも影響が本格化してくる。