とはいえオピニオンやエグジットの行使は、ややもすると自分のキャリアを危険にさらすことにもなりかねない。ゆえに汎用性の高いスキルや知識などの「人的資本」と、信用や評判などの「社会資本」を厚くして、「モビリティ」を高めていくことが、リスク管理上は不可欠になる。

「モビリティ」はこれから先のキャリア形成における最重要キーワードだ。これまでスキルや知識の獲得は、会社という枠組みのなかでおこなわれるケースがほとんどだった。だが今後は、どんな場所でも生きていけるように学び続ける意識が欠かせなくなってくる。

◇オピニオンやエグジットを行使できない理由

 日本ではこれまでオピニオンやエグジットが積極的にされてこなかった。理由としては次の2つが考えられる。

(1)美意識の欠如:自分なりの美意識(審美眼、道徳観、世界観、歴史観)がある人は、許容できることとできないことの線引きがはっきりしている。逆にこれが欠如していると、仮に上司が一線を越える振る舞いをしても、声をあげて指摘することができない。

(2)モビリティの低さ:ここでいうモビリティとは、エグジットを行使して組織を出たとしても、いまの生活水準を維持できるだけの能力のことである。モビリティが低いということは、スキルや知識がいまの組織においてのみ有効なもので、汎用性がないということだ。副業を好ましく思わないような典型的な日本企業に長いあいだ勤めていると、モビリティはいっこうに高まらない。だから彼らはオピニオンやエグジットを行使できないのである。

【必読ポイント!】
◆年長者は敬うべきか
◇年長者とイノベーション

 日本には「年長者は尊敬すべきである」という暗黙のルールがある。しかし年長者ほどスキルや判断能力が高いというデータはじつのところ存在しない。したがって「年長者は尊敬すべきである」というのは、わたしたちの儒教文化に根差した「信仰」だといえる。

 オランダの心理学者ヘールト・ホフステードがおこなった調査結果によると、日本は「年長者に対して反論するときに感じる心理的な抵抗の度合い」が相対的に高い国として分類されている。一方でイノベーションランキングの上位にくるのは、年長者に対して反論しやすい国ばかりだ。