学生、企業双方が困惑する
ミスマッチを解消

 なぜ、加茂さんは休学してまで事業に専念しているのだろうか?

「もともと起業には興味があり、大学入学後もベンチャー企業でインターンとして働きました。社会的意義のある事業をしたいと考えていた頃、学部の先輩から『研究が忙しくて満足に就職活動ができない』と聞いたのです。たしかに理系の学生は研究や実験が忙しく、なかなか就活をする時間が取れない現実があります。そのため、きちんと調べずに就職先を決める人が少なくない。結果的に入社後、自分の専門知識を生かすことができずに後悔するケースも少なくないのです」(加茂さん、以下同)

 こういったミスマッチを減らすために、学生はLabBaseに自分の専門分野や研究に関する詳細なプロフィールを登録する。一方、理系学生を採用したい企業や研究所は、彼らの実績を見てアプローチをする。そうすることで、本当に欲しい人材を獲得することができるという。

 実際に利用している学生に聞いてみると、「想像していなかった分野からのスカウトが来て驚きました」「このサービスがなかったら自分の適性に合った仕事に出合えなかった」「人生が変わりました」――こんな感想を話してくれた。

「これまで理系学生の就活と言えば、企業が研究室にリクルーターを派遣したり、教授の推薦で決まるケースが大半でした。そのため、どうしても大手企業に偏りがちで、ベンチャー企業は、たとえ将来性が有望であっても、選択肢には加われなかったのです」

 一方の企業側も困っている。ここ数年、売り手市場ということもあって、採用競争が激化している。欲しい人材にアプローチするのが難しくなっているのだ。

 そんな中、LabBaseを利用することで、適した人材の採用にこぎ着けた企業も増えている。例えば、化学メーカー大手の昭和電工。これまでは化学分野の学生に関しては順調に採用できていたが、じつは電気や機械系のニーズもあった。しかし、化学のイメージが強いので、他分野の学生が興味を示さず困っていた。

 ところが、LabBaseを利用することで、電気や機械系の優秀な学生に直接アプローチすることができ、一気に4人の学生を採用することができた。