アルコール依存症の夫がいたユリコさん(仮名・50代)は、離婚後、ボロボロになった心身を治療しながら、3人の子どもたちを育ててきた。生活保護しかなかった時期もある。

「福祉事務所は、早急に就労自立することを促します。その指示に従わなければ、『生活保護が打ち切りになるのでは?』と焦ってしまい、かえってトラウマ障害に苦しみ、結局は子どもたちにまで辛い思いをさせることが、よくありました。トラウマ障害は、15年以上が経過した今もあります」(ユリコさん)

 傷つき病んでいる人々に対しては、まずは治療、そして回復を支援するのも、福祉事務所の仕事であるはずだ。生活保護を脱却した後、介護系専門職として働いてきたユリコさんは、このように語る。

「見守り、待つことが大切なはずです。それから、基本的人権の尊重です。私自身、生活保護で暮らしていたとき、引け目を感じながらの生活でした。でも、『引け目を感じるなんて、間違っている』と言えることが、自立であるはずです」(ユリコさん)

生活保護に助けを求めまた傷つく
自立ではなく不健康の助長に

 DV被害女性たちはそれぞれ、歩んできた人生も、傷つきの内容も深さも、異なっているはずだ。人間は、「お湯をかけて3分」のカップ麺ではない。「だいたい2年くらい、最長5年くらいで生活保護から脱却を」というわけにはいかない。

「すべての世帯、すべての方が、それぞれ状況もプロセスも異なっています。だから、個別対応してほしいです」(ユリコさん)

 個別対応は、対人援助とケースワークの基本でもあるはずだ。

 DV被害者や被虐待児童に接することの多い援助職の和久井みちるさん(50代)には、夫のDV被害から逃げ、生活保護のもとで療養生活を送った経験がある。和久井さんによれば、現在DV被害者に対しては比較的スムーズに生活保護が開始されるという。しかし、安心するわけにはいかない。一般市民と行政との間には、圧倒的な力の差がある。