「DV被害女性が生活保護を申請しようとして福祉事務所のカウンターにいる」という場面では、なおさらだ。和久井さん自身が生活保護を申請したときも、男性ケースワーカーの声が大きいことに強い威圧感を覚えたそうだ。

「DV被害女性は、大声や威圧的な態度に敏感に反応してしまいます。たとえば就労指導を受けたとき、『現状ではまだ就労は無理だ』と思っていても『言う通りにしないと怖い……』と反応し、無理に就職活動をして、不調の日々がダラダラと長引きしかねません」(和久井さん)

 結果として「自立の助長」ではなく「不健康の助長」になってしまう最大の原因は、DV被害に関する理解の不足だろう。

「生活保護に限らず、警察も児童相談所も学校も社会全体も、暴力とその被害者の実情について、もっと理解を深めてほしいと思います。1人のDV被害者としての願いです」(和久井さん)

追い詰められた母子を救えるか
子どもの利益のための「親権」とは

 それでも、母親が生活保護で安全な生活を送り始め、精神科でDV後遺症の治療を受け始めると、「生活保護」と「精神疾患」が新しい足かせとなる。親権をめぐる両親の争いでは、父親が子どもに暴力を振るい続けていても、定職と定収入があれば、「生活保護」「精神疾患」という2つのレッテルが貼られた母親よりも圧倒的に有利だ。

 現在の生活保護は、追い詰められた母親と子どもたちのための「最後のセーフティネット」としての役割を十分に果たせていない。そして問題は、生活保護制度の外にもある。

 貧困・虐待といった状況に置かれた多くの子どもたちと関わる徳丸ゆき子さん(認定NPO法人CPAO (シーパオ) 理事長 ・ 大阪子どもの貧困アクショングループ 代表)は、「親権」に踏み込む必要性を指摘する。