(2)資産は計画的に取り崩し、普通預金に移して使おう。分配金が支払われる投資信託や保険、あるいは信託銀行などを使うのはコストが大きすぎる。一見、高齢期向きの商品やサービスに引っ掛かってはいけない。

 (3)新しい金融商品は気にしなくていい。また「0.5%ルール」は厳格に守ること。

課題3 認知症対策

 資産運用に関する限り、自分が生きている間、また死後を考えるとしても、効率的で低コストな運用が淡々と続くことが望ましいが、自分の認知機能が衰えた際にもその状態が継続できるような準備が必要だ。

 例えば、金融機関や不動産会社などに、取引の前提として後見人をつけるよう要請されて家庭裁判所に申し立てを行うと、家族を後見人に推薦しても、弁護士や司法書士などの職業後見人が指名されるケースが多々ある(法定後見)。

 法定後見では、もっぱら本人の資産を「保全」することに重きが置かれる家族にとって、資産の利用が不自由になる点と後見人への報酬(月額2万円以上。資産額によって増額)が掛かったりする点に問題があるので、できればこれを避けたい。

 これを避けるためには、本人が契約を結ぶ判断能力を持っているうちに、家族が金融取引の代理人となる一方、必要が生じた場合(認知症の診断が下った場合など)に家族の誰かが任意後見人になる契約を締結しておくことが有効だ(公証人役場で契約書を作る)。

 実際には、こうした任意後見に移行できる契約を持ちながら、家族が金融取引を代理し続ける形で金融資産を扱うケースが大半であるようだが、法定後見を「予防」できる点で安心だ。

 もちろん、代理人になった家族が資産を不適切に扱うリスクもあるので、判断能力があるうちに、(A)誰を代理人・後見人にしたらいいかの見極め、(B)資産を将来どう扱って欲しいかの決定し伝達することの2点が重要だ。

 また、金融資産や不動産を将来自分が思っているような形で運用・利用する方法として、「信託契約」の利用も検討に値する。いわゆる「家族信託」のような形で、信託銀行を使わなくとも私的な信託契約を結ぶことができるので、特に不動産の扱いなどに利用価値がある。

 信託銀行各社も認知症対策をうたった商品やサービスを投入しているが、今のところ利用コストが高いものが多いように思われる。

 任意後見、家族信託、信託銀行のいずれを使うにしても、高齢者本人に代わって意思決定を適切におこなってくれる代理人を確保しておくことが重要だ。もちろん、代理人にも正しい資産運用の方法を理解してもらうことが大切だ。

 ジェロントロジーの研究によると、高齢者は意思決定を先延ばしする傾向があるという。団塊世代諸氏には、手遅れにならないうちに正しい資産運用方法を理解・実行し、将来に対して必要な備えをしていただきたい。

(経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員 山崎 元)