子どもの理想の教育を
リードする出版社

 そんな張氏のコメントを裏付けるように、中国では翻訳出版が好調だ。CCBFでも、国内だけでなく海外の大手から中小までのさまざまな出版社がブースを連ね、外国の作家のサイン会やイベントには長い列ができていた。また、ポプラ社の中国法人、北京蒲蒲蘭文化発展有限公司が出展するブースのにぎわいぶりからは、日本の児童書の人気がうかがえた。

 中国の政府と出版業界は、中国の作家育成に力を入れるため支援しているというが、依然として中国語に翻訳された外国の本に中国の児童書市場が依存している状況が続いている。

 曹氏は「児童文学の分野で中国の作家が、未熟であることは否めません。しかし、素晴らしい海外の作家から学ぶことはできます。私は、中国と海外で活躍する作家とのコラボレーションによる作品作りで、中国の児童文学界を刺激するという張氏の考えを聞き共感しています。若い作家の成長に期待しなければいけません」と述べ、自らもブラジルの国際アンデルセン賞受賞画家ホジェル・メロ氏との共作など、海外の作家との作品を多数発表している。

 曹氏のような1タイトルが毎年100万部以上売れるような本を何冊も書き、世界8ヵ国以上で翻訳本が出ている作家が、新しい試みを積極的に行う姿勢に中国の児童書出版の頼もしさを感じずにはいられない。

 中国の出版社は基本的に国営で、検閲や、「あれ?この文章変わってない?」というような通称「中国マジック」といわれる規制があったりと、時に残念な出版大国として語られることはあるが、一方で斬新なアイデアや実験的な試みがあふれる児童書の多さに驚かされたりする。

 それは、想像力がないと生き残れない時代に、中国が理想とする教育を、子どもに本を手渡す出版業界がリードする挑戦でもある。中国の児童書出版が活気にあふれているのは市場の大きさだけではなく、出版社の志かもしれない。

(まついきみこ@子どもの本と教育環境ジャーナリスト/5時から作家塾(R))