柳澤幸雄氏柳澤幸雄(やなぎさわ・ゆきお)
1947年生まれ。東京大学名誉教授。開成中学校・高等学校校長。開成高等学校、東京大学工学部化学工学科卒業。71年、システムエンジニアとして日本ユニバック(現・日本ユニシス)に入社。74年退社後、東京大学大学院工学系研究科化学工学専攻修士・博士課程修了。ハーバード大学公衆衛生大学院准教授、併任教授(在任中ベストティーチャーに数回選ばれる)、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授を経て2011年より現職。自身も男の子を育て、小学生から大学院生まで教えた経験を持つ(撮影/工藤隆太郎)

 保育園や幼稚園から小学校に上がると、環境ががらりと変わります。手厚く世話を焼いてくれる人はいなくなり、自分のことはすべて自分でしなくてはなりません。勉強、規律、集団行動……。こうした文化的ギャップにショックを受け、小学校がいやになってしまうことを、俗に「小1ギャップ」などと呼びます。

 東大合格者39年連続日本一の開成中学・高校の柳沢幸雄校長が著した『男の子を伸ばす母親が10歳までにしていること』の中から、ここでは、小1ギャップへの備えや、小学校生活をのびのびと楽しみ充実させるためのヒントを、わかりやすく解説します。

*  *  *

 入学までに子どもに身につけさせたいのは、「大人に対する信頼感」です。

 親は、「大人は困ったときには手を差し伸べてくれる存在」「困ったときは助けを求めていい存在」だと、子どもにしっかり伝えてほしいのです。

 子どもというのは年齢が低ければ低いほど、自分の知っている世界に寄りかかっていたい、自分の知っている世界にいて安心していたいという気持ちがあります。ところが、小学校はそれまでの生活とは何もかも違いますから、わくわくやドキドキといったポジティブな感情と同時に大きな不安も抱えているのです。

 だからこそ、「困ったことがあったら何でも先生に相談していいのよ」「学校の先生はみんな子どもの味方で、一年生が入ってくるのを楽しみにしているのよ。うれしいね」といった声かけが重要になります。新しい世界は不安だけれど、そこにはちゃんと助けてくれる人がいるということが、子どもの不安をやわらげ、学校生活をスムーズにスタートさせてくれるのです。

 また、小学校では「自分のことは自分で」が基本となるため、困ったことや助けてほしい時、自分から声を上げることが求められます。そんな時、自分の言いたいことがきちんと伝わるよう、論理立てて話せることは本人の大きな助けになります。

 ですから、親は日常生活の中で、子どもの話す力が育つよう、できるだけ聞き手に回り、どんどん話をさせるよう心がけましょう。