パソコンやスマホの普及によって深刻な活字離れが問題視されている現代。その一方で、読書は人生を豊かにするとたびたびいわれるが、実際に読書は人生においてどのような役割を果たしてくれるのか。本連載では、作家として執筆や講演など幅広く言論活動をしている佐藤優氏の新刊『人をつくる読書術』(青春出版社)の中から、人生がより深まる読み方や血肉となった自身の読書体験などを抜粋して紹介する。
言語力を高める“読書の入り方”とは
人間が人間として文化的な生活をしていくということは、言葉をいかに操ることができるかということと同義です。自分の気持ちを知り、整理するのも言葉、自分の思考や意志、思想を形づくるのも言葉。そしてそれを他者に表現として伝える手段も言葉しかありません。ですから表現には言語力が必要不可欠で、その力をつけるのが読書です。読書で養った読解力と表現力は表裏の関係にあり、読解力以上に表現力を高めることはできません。
若いうちはとにかくいろいろなジャンルの本を多読することをおすすめします。ただ、限られた時間でいかに効率的に本を読むかということを考えると、やはり古典を読むこと が一番だという結論になります。古典といっても、何十年、何百年も前の作品だけとは限りません。私の考えでは、この移り変わりの激しい時代で10年間、読み継がれてきた作品は古典といって差し支えないといえます。具体的には、文庫になって10年間、書店の棚に残っている本です。