九州電力の本店約11年ぶりの値下げに踏み切った九州電力。域外の大手電力会社の侵攻阻止が最大の狙いだ Photo by Ryo Horiuchi

 食品や観光施設などの“値上げの春”が訪れている。そんな中、九州経済界の雄は、強力な“武器”を引っ提げて攻めに転じようとしている。

 九州電力は4月1日からの電気料金の値下げに踏み切った。値下げ幅は平均で1.09%とわずかだが、約11年ぶりの決断である。

 九電は東日本大震災後、保有する原子力発電所6基全てが停止に追い込まれ、代替の火力発電所を稼働させたことで燃料費が収支を圧迫。そのため、2013年4月以降に値上げを敢行した。無論、今回の値下げは原発の再稼働による経営効率化が背景にある。

 実は、もともと九電は値下げには慎重だった。というのも、前回に値上げをした際、現在再稼働している玄海原発3、4号機、川内原発1、2号機の計4基に関するコストを電気料金の原価に織り込んでいたからだ。値上げをしてもなお、大手電力会社の中では、北陸電力に次ぐ電気料金(一般家庭向け)の安さを維持していたことも大きな要素だった。