中国経済は試練の時
投資中心の成長のツケが顕在化
中国経済が試練の時を迎えている。これまでの投資中心の成長のツケが顕在化しており、経済全体の効率が大きく低下している。
具体的には、大規模なインフラ投資を行っても、その経済効果が限定的なため、思ったように景気を回復軌道に戻すことが難しくなっている。かつて、効率の高い投資案件がなくなり、無駄な箱モノ作りに終始したわが国の姿がダブる状況だ。
昨年11月以降の景気の落ち込みは、中国政府の予想を超えたものだったはずだ。「ここまで経済が悪化するとは想定していなかった」というのが共産党指導部の本音だろう。経済成長を旗印に民衆の支持を得ることは限界だ。これまでのような経済運営は、限界を迎えているといってよい。
そんな中、5日から中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代)が開幕した。全人代における最重要事項は、習近平政権の威信を維持することだ。その一つの方法が、“強国”路線“を打ち出すことだ。習氏は、軍事力を強化して世界の覇権を目指すための足場を固めたい。それが全人代における最大のポイントとみられる。
すでに共産党内部でも習氏への不満が膨らんでいる。
「経済環境の悪化を食い止めることができていない」という不満に加え、「なぜ、軍事面で十分な力をつけてから米国に挑まなかったのか。動くのが早すぎた」との批判まである。
経済成長が限界を迎えた結果、中国は軍事力を重視せざるを得なくなったといえる。習近平国家主席は、周囲の不満が高まる状況を乗り切るために強国路線を重視し始めたとみるべきだ。