禁煙成功までの自分への
ご褒美を準備すること

 処方されるバレニクリンは、体内でニコチンに似た働きをします。たばこのニコチンが体内に入ると、急激にドーパミンが放出されます。このドーパミンの大量放出が、喫煙者が求める頭が「ボーッ」とする状態を引き起こします。

 バレニクリンは、体内でニコチンと似たドーパミンの少量の放出を持続させる薬で、体内に入ると、まるでニコチンを摂取したような状態になるのです。

 前述の3日目、3ヵ月目では、このバレニクリンでなんとか乗り切ることを目指しましょう。

 第四のアドバイスはアルコールの機会を避けることです。しかし、社会人であれば、接待や同僚、上司との付き合いなど、どうしてもアルコールの機会はついてくるものです。そして、先に述べたように、アルコールが入るとタバコは恋しくなるものです。

 そこでバレニクリンをできるだけ多く残しておくことが一つの方法です。薬の有効期間はかなり長いので、残しておくことも可能です。宴会があるときに飲んでおくという方法が有効です。宴会開始時間の、約2時間前に飲むと良いでしょう。

 第五のアドバイスは、なるべく多くの人に手伝ってもらうことです。会社の机に張り紙をしておくことも有力な手段です。会社の同僚に宣言書を配布しておくことも良いでしょう。また、同僚と一緒に禁煙を開始したり、禁煙外来に誘ったりすることも効果的です。

 最後のアドバイスは、禁煙成功までの報酬です。3日目、3週間目、3ヵ月目、そして3年目に自分自身へプレゼントを準備しておくのです。友人と禁煙をしている場合は、食事にいったり、新しいゴルフクラブを購入したり、3年目には海外旅行にいったりするのも良いでしょう。3年が長いと感じる場合は1年目、2年目にも温泉旅行を導入してみましょう。必ず「禁煙1年目旅行」とか「禁煙2年目旅行」といった名目を付け、禁煙をがんばった自分へのご褒美、とすることがポイントです。この報酬についても、家族や会社の同僚に宣言しておけばより効果的です。「報酬宣言書」として書いて残しておくことをお勧めします。

 禁煙することで、喫煙に使ってた時間が空くため、時間が長く感じるようになり、時に、魔が差してしまいます。この魔に惑わされないようにしなければ、禁煙への道は開かれません。その為に、禁煙に変わる「良いもの」として、報酬が重要な役割を果たします。医師から「がんばりましょう」といわれるだけでは、禁煙の過程で味わうのは単なる苦しみだけです。

 みなさまの健康のために参考になれば幸いです。



旭 伸一
【医学博士、日比谷公園クリニック院長、医療法人社団旭光会理事長】

1963年福井県生まれ。1989年自治医科大学卒業。10年間は福井県立病院・県内診療所にて地域医療に従事。2007年喫煙と飲酒の健康影響を研究し医学博士取得。日比谷公会堂地下に日比谷公園クリニックを立ち上げ第一線で検診・総合診療を幅広く実践している。地域に溶け込む全人的医療こそが早期発見・確実治療の原動力だと考えている。日本医師会認定産業医、日本内科学会認定内科医。