ダウンロード違法化の範囲を拡充
著作権法改正法案はなぜ見送られたか
文科省がダウンロード違法化の範囲を拡充する著作権法改正法案を今国会に提出しようとしましたが、世論の強い反発が収まらずに自民党で法案が了承されず、国会提出は見送られることとなりました。
違法コンテンツに対する規制強化は当然ですが、同時にそれに対する懸念の声もよくわかります。ダウンロード違法化について両者が満足できる最適解は、存在するのでしょうか。
今回の著作権法改正法案には、違法コンテンツ対策として2つの柱があります。1つの柱は違法コンテンツが置かれているウェブサイトのURLをまとめ、ユーザをそれら海賊版サイトに誘導する“リーチサイト”や“リーチアプリ”に対する規制の導入です。
具体的には、リーチサイトの運営者やリーチアプリの提供者には刑事罰(非親告罪)を科し、またリーチサイトやリーチアプリにリンク情報などを提供した者に対しては、権利者の民事措置(差止請求、損害賠償請求)を可能にするとともに、刑事罰(親告罪)も科しています。
著作権者に無断でアップロードされた違法コンテンツは、リーチサイトにリンクが貼られることで62倍も多く視聴されてしまう(電気通信大調査)という現実を踏まえると、リーチサイトやリーチアプリへの規制の導入は当然の措置です。実際、この点については識者や世論の反発もほとんどありません。
これに対して、違法コンテンツ対策のもう1つの柱であるダウンロード違法化については、弁護士や漫画家といった方々から強い懸念と反対の声が上がり、結果として法案の国会提出が見送られることになりました。そこで、このダウンロード違法化についてすべての人が満足する最適解が存在するかを考えてみたいと思います。