「人工透析をやめる」選択肢、医師や患者、患者の家族はどう対処すべきか?
「人工透析をやめる」選択肢、医師や患者、患者の家族はどう考えるべきか? 写真:黒部市民病院腎センター(吉本敬一センター長提供)

毎日新聞で公立福生病院(東京都、316床)の人工透析における診療上の考え方やその方法について批判する記事が続いている。報道によると、同院の腎臓病総合診療センターでは、方針としてセンターの医師が終末期と判断する患者には「人工透析治療を始めない、中止する」の選択肢も提示し、21人が亡くなったという。メディアや世間の批判は、福生病院に集中しているが、日本透析医学会で発表されたアンケート調査結果によると、同様の問題は他の病院でも発生している可能性がある。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

全国の病院で
「透析をしない」選択肢を提示

「終末期」と聞くと、医療者以外の人は生命保険のリビングニーズの条件「余命6ヵ月以内」を思い浮かべるかもしれない。だが、医療ではこの時期の病態は個別多様として、明確な定義が定められていない。厚生労働省(以下、厚労省)も日本医師会も「患者の状態を踏まえて、医療・ケアチームで判断すべき」としている。このため、医師によって「終末期」の判断が異なる可能性がある。

 毎日新聞の報道によると、公立福生病院の医師らも人工透析を受けずに亡くなった44歳女性(糖尿病性腎症)について「終末期だった」と主張しているという(注:「終末期」は昨年、「人生の最終段階」と言葉を言い換えることになったため、以下、人生の最終段階と記述する)。

 医学専門誌に公表されている透析に関する調査結果(*1)では、回答した全国の病院の約半数(47.1%、240施設*2)は透析を始めるとき、および、治療を続ける過程で、患者に「治療を受けるかやめるか」の選択肢を示していた。

 これは、日本透析医学会が診療ガイドラインの中で、人生の最終段階の患者を対象に、透析を始めるとき、および、治療を続ける過程でその継続について話し合うための提言(*3)を出しているからだ。

 だが、同調査では前述の選択肢を示している病院の約4分の1が「日本透析医学会の提言に沿っていなかった」と回答している。その理由について、「本人が受診しなくなった」「悪性腫瘍(がん)終末期や多臓器不全で十分な話し合いができなかった」「認知症等で本人の意思が確認できなかった」のほか、提言に沿っていない内容として「カンファレンス(病院内の会議)を1回しか開かなかった」「多職種チームの決定でなく、主治医の意向だった」「透析見合わせを検討する状態ではなかったが、高齢や状態が悪いなどで本人の強い意思と家族の同意があった」と紹介されていた。

*1 岡田一義、透析差し控え・中止(2)「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」-全国アンケート調査結果を踏まえて、『臨床透析』、vol.34,no.10,2018年
*2 全国1407病院の透析室を対象にした調査で、510病院(回答率36.2%)、病院数は筆者が計算した
*3 日本透析医学会「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」