ルールの「穴」が存在する職場で
不正行為が多いという現実

 これら、働き方での差を見てみると、まず1つのポイントは、従業員側ではなく、「企業・職場側のルールの遵守」が徹底されているかどうかだ。「マニュアル・ツールが活用されていない」「面接時の説明と仕事の内容が違う」「サービス残業を強いられる日がある」といった職場が、不正行為の頻度が高い(性年代・職種を統制した二項ロジスティックス回帰分析の結果でも統計的有意)。

 つまり、職場の労働環境そのものに、労働・就業にあたってのルールの「穴」が存在する職場で、従業員の不正行為が多いということだ。サービス残業があり、マニュアルが無視され、事前説明と実際の仕事が違うこと……企業の人的管理がそもそも行き届いていない職場で、従業員による規則違反がより多く起こっていることがわかる。一時点の調査であるため、どちらがそもそもの原因なのかは厳密には特定できないが、どうやら従業員に「ルール」を守らせるためには、企業や店舗側も「ルール」を守っている必要がありそうだ。

 犯罪学のよく知られた知見に、「割れ窓理論」(Broken Windows Theory)がある。窓が割れた荒廃した町並みを放置すると、それの環境そのものが犯罪を誘発する、というものだ。同じように、店舗や事業所の労働環境が、「不正の種」を自ら育ててしまう可能性はある。端的なコンプライアンス・リスクを抑える意味でも、「種」を育てない意味でも、企業側の規則・法律の遵守徹底がまず求められそうだ。

 もう1つのポイントは、「職場風土」の問題だ。「問題行動」の根本にある課題は、「職場をより良いものにしよう」「店舗に貢献しよう」といった意識が醸成されていないことである。下図に示したとおり、そうした意欲が醸成されている職場は、やはり不正行為の割合が極めて低くなっていた。

 こうしたことを言うと、「アルバイトにそんな意欲があるわけはない」と考える人もいるかもしれない。しかし、人が働くということはそんな紋切り型の考え方で割り切れるほど単純ではない。アルバイト・パートの雇用形態でも、「前向きに職場を良くしよう」「よりお客さんに喜んでもらおう」と、与えられた役割の中で真摯に働いている従業員は数多くいる。多くの現場はそうしたアルバイトによって支えられているし、サービスを受ける側の我々がまさに日々その恩恵を享受している。データにおいても、「職場をよくする雰囲気がある」という条件に「とてもあてはまる」「ややあてはまる」と答えた従業員は47.4%に上った。