娘を載せて腕立て伏せをする父親Photo:PIXTA

 自重にせよ、マシンエクササイズにせよ、筋トレブームが続いている。

 米国医師会が発行するJAMAネットワークに掲載された報告によれば、腕立て伏せを40回以上できる中年男性は、心血管疾患(心筋梗塞や狭心症)のリスクがかなり低いという。

 研究者らは、簡単に心血管疾患のリスクが測定できる方法を模索し、腕立て伏せに着目。

 2000~10年の間に米インディアナ州で収集された18歳以上の男性消防士の身体検査データから、腕立て伏せ能力(可能回数)が判明している1104例について、関連を解析した。対象の平均年齢は39.6歳、平均体格指数(BMI)は、28.7だった。

 10年間の追跡期間中、37件の心血管疾患が発生。解析の結果、腕立て伏せが10回未満しかできない男性と比べ、40回以上できる男性の心血管疾患の発症リスクは、96%も低いことが判明した。

 研究者は「職業柄、身体活動のレベルが高い男性を対象としたもので、女性や一般的な身体活動量の男性には当てはまらない」としているが、ちょっと気になる数値ではある。

 客観的な体力、筋力指標は、心血管疾患リスクの評価に役立つことはよく知られている。

 例えば、世界17の高所得~低所得国の地域住民、およそ14万人(年齢中央値50歳)を対象とした「PURE試験」からは、握力が血圧値に匹敵する「リスク発見器」であることが示された。

 年齢と身長で握力を補正し、全死亡リスクや心血管疾患リスクとの関連を比較した結果、握力が5kg低下するごとに全死亡率が1.16倍、心血管死は1.17倍に上昇。心筋梗塞と脳卒中の発症率も、それぞれ有意に上昇していたのだ。それこそ「筋肉は命の守り手」というわけ。

 参考までに、男性の平均握力は低所得国が30.2kg、中所得国が37.3kg、高所得国は38.1kgで、女性はそれぞれ、24.3kg、27.9kg、26.6kgだった。

 握力を測る機会はめったにないが腕立て伏せならどこでもできる。さて、何回できましたか?

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)