成年後見制が法務省管轄の民法を改正して発足したこともあり、厚労省はこの制度に後ろ向きだった。このため、介護現場で制度全般への理解が進まなかった。選任された家族や親族に戸惑いが広がることになる。

 そんな背景の中で、2000年度は全後見人の中で親族後見人が90%を占めた。親族後見人が被後見人の預貯金を横領したり、不動産を勝手に売却したりするなど不正が目立つようになる。家族・親族といえども家裁から後見人に選任されれば、被後見人の財産はその人だけのために使わねばならない。「家族の財布は一緒」という通念は許されない。

 毎年のように不正件数と被害額が増え続けていく。ピークとなった2014年には、831件もの不正が報告され、その被害総額は56億円を超えた。

 後見制度への不信につながりかねない相次ぐ不正を前に、制度を統括する最高裁は対応策を打ち出す。まず、親族からの後見申し立てがあっても、専門職に振り替えるように動き出す。専門職とは、弁護士のほか司法書士、社会福祉士、行政書士、税理士、精神保健福祉士などの国家資格保持者である。

 現場で後見人を選任するのは各家裁の独自の判断だが、最高裁の姿勢が伝わり、親族後見人の割合は徐々に減少していく。代わりに専門職貢献人が増えだす。そして制度発足13年目の2012年には、遂に親族後見人の比率が48.5%となり、過半数を割りこむ。以降も、専門職後見人との逆転が加速し、最新の調査の2018年には、親族後見人は23.2%まで減少した。

 一方、専門職の中でトップの司法書士は28.9%に達し、親族後見人を上回った。22.5%の弁護士を含めて他の専門職と合わせると67.6%になる。これだけ急速に専門職が増えたその勢いがストレートに表れたのが冒頭のAさんの事例だろう。

 最高裁が採ったもう1つの不正防止対策は、「後見制度支援信託」制度の創設である。被後見人が日常生活で使用する分を除いた金銭を、信託銀行や特定の銀行に信託すること。その信託財産を払い戻したり、信託契約を解約したりするには、家裁の指示書を必要とした。これにより、後見人が払い戻しや解約を自由にできなくなり、被後見人の財産の横領を防ぐことができる。

 この制度信託は、後見人が専門職でなく親族の場合に限り、30万円の手続き収入が得られるのは弁護士か司法書士に限るなど、「専門職に傾斜した仕組み」という声も出た。

 また、利用者が同制度を断ると家裁から、弁護士か司法書士の後見監督人をつけるよう求められる。後見監督人は、後見人の活動を文字通り監督するお目付け役だ。後見監督人の就任条件に基準はなく、「必要があるときに」と家裁では説明している。