ゼネラリストとスペシャリスト
それぞれの道が必要

 発達障害が原因の腰痛は治療が難しい。本人が障害を受容することが必要な上に、周囲の理解と協力も不可欠だからだ。

 アメリカの場合は、発達障害の人でも生きやすい社会環境があるという。

「日本では忖度(そんたく)、空気を読む、など、場に合わせることが求められる局面が多々あります。社会でも会社でもジェネラリストが求められる。しかし、ジェネラリストとして周囲に合わせることが極端に苦手な人がいます。当然ですよね。

 症例2の男性の場合、パソコンに向かって自分ひとりで仕事をしている分にはなんら問題がなく、普通に優秀な人だった。ところが環境の変化によって、それまで分からなかった発達障害が露呈してしまいました。

 コミュニケーションが上手くとれないために、部下の仕事も自分でやってしまう。そのほうが効率もよく、うまく進行するという面もあるのでしょう。しかし、それではキャパシティをオーバーしてしまうし、ストレスを抱えてしまう。

『日本の腰痛 誤診確率80%』(集英社インターナショナル)、北原雅樹著、192ページ

 日本の組織では、上に行くほど組織全体を見る役割のジェネラリストであることを求められる。好きでジェネラリストをめざす人は構いませんが、ジェネラリストに向かない人には苦痛です。部下を持たない『担当課長』のように、ずっと専門的な仕事をするスペシャリストとして働きを続けられる制度は必要だと思いますね。

 アメリカの組織などでは、給料は上がるけれどもジェネラリストが求められないコースも用意されています。

 日本もそんなふうに社会が変われば、発達障害で結婚や仕事からドロップアウトする人が減り、腰痛で苦しむ人も減るかもしれません」

 15~18人に1人の割合で発生していると推定されている発達障害。その人たちが、精神的な苦痛に加え、体の痛みも抱えているということはあまり知られてない。

◎北原雅樹(きたはら・まさき)
横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療教授。1987年東京大学医学部卒業。医学博士。専門は難治性慢性疼痛。帝京大学医学部付属市原病院麻酔科、帝京大学医学部付属溝口病院麻酔科勤務後、米国ワシントン州立ワシントン大学集学的痛み治療センターに臨床留学。帰国後、筋肉内刺激法(IMS)を日本に紹介する。2006年より東京慈恵会医科大学ペインクリニック診療部長、2017年より横浜市立大学付属市民総合医療センターに移籍。IMS治療の第一人者としてテレビ、新聞、雑誌などでも幅広く活躍中。