ウェルチはフォーカスと言っただけ
「選択と集中」は誤訳

 そもそも、ゼネラル・エレクトリック(GE)のCEOに君臨したカリスマ経営者、ジャック・ウェルチの著書により「選択と集中」という言葉が日本でも一気に広がったのですが、彼はそんなことは言っていません。「フォーカス」、つまり「焦点を当てろ」と言っただけであって、「新しいことをやるな」などと言ったことはないんです。

 事実、ウェルチはCEOを務めた20年間で、1000もの事業を買収したり、新しく始めたりしています。一方で、やめたのはわずか70程度。実は、ものすごい数の新規事業を手掛け、多角化を図ったんですよ。

 だから多角化を否定してもいないし、リストラを推進したわけでもなかった。にもかかわらず、日本では誤訳され、過度な減量経営に突き進んでしまったという不幸な歴史をたどることになったのです。

──とはいえ松岡さんも、バブル崩壊後のいわゆる「不良債権時代」には「選択と集中」を進めなければいけないと言っていませんでしたっけ。

 確かに言っていました。しかし、ダイエットは短期集中にすべきなのです。ウェルチも最初の2年間はダウンサイジング、減量経営をやりました。ところが、それは2年間でやりきり、残り18年間は拡大経営をやったわけです。だから、日本も1997~98年の金融危機の際には、「選択と集中」は正しかったと思いますよ。

 しかし、その後に世界中が「ドットコム景気」に沸いたり、あるいは中国が資本主義に組み込まれることでマーケット拡大したりといった成長過程に入っても、日本企業はギアを変えることなく、「選択と集中」をやり続けた。そこに大きな問題があるのです。

 しかもです。われわれが企業にM&A案件を持っていくと、「シナジーがないと取締役会通せないんだよね」「シナジーがないと株主に説明できない」「社外取に説明できない」とか、そういう既存ビジネスとのシナジーありきという議論になるんですよね。

──それは、正しいんじゃないんですか。

 そうでしょうか。高度経済成長期って、みんな多角化、つまりコングロマリット化を図ってきましたし、今、世界で伸びているGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)にしても中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)にしても、みんなそうやって大きくなっているんです。