一方、リーンバーンは、空気量はそのままでガソリン量を減らす技術。かつて1996年に三菱自動車がガソリン直噴リーンバーンエンジン、GDIを市販したときは、空燃比でいうと空気18~20に対し燃料1という程度の比率だった。ストイキよりもやや薄いラムダ=1.2~1.3程度の混合気である。ところが現在は、空気30~45に対し燃料1、ラムダ=2~3という極薄混合気を使う超リーンバーンを開発対象に据えている。

マツダのスカイアクティブX
エンジンに搭載

 いくつかの例を紹介しよう。まずマツダのSPCCI(スパーク・プラグ・コントロールド・コンプレッション・イグニッション)だ。この技術は、年内市販予定のスカイアクティブXエンジンに搭載する。最大でラムダ=3程度の極薄混合気を使うようだ。三菱GDIの時代は「あまり燃焼を薄くしすぎるとNOが大量に出る」といわれていたが、空気35に対し燃料1、ラムダ=2.3くらいの極薄混合気を使うとNOがほとんど出ない、と判明した。しかも燃焼温度が劇的に下がるため、冷却水に奪われる熱量が減り、熱効率が向上(燃費がアップ)する。

 問題は“燃焼圧力が減る”という現象だが、マツダは同時多点点火というディーゼルエンジンの燃焼パターンをガソリンエンジンで行って対処する。少ない燃料でも短時間内に一斉に燃やして、エンジンのパワーとトルクを確保する。現在のガソリンユニットは、燃焼温度が高すぎるためにエンジン冷却水にその熱を捨てる熱損失と、高すぎる燃焼圧力を排気として捨てる排気損失を合わせ、エネルギーの約半分を失っている。超リーンバーンは、“捨てるエネルギー”を最初から出さない、という発想だ。

 続いて、日本の大学と自動車業界の研究機関、AICE(自動車用内燃機関技術研究組合)が共同研究プロジェクト“革新的燃焼技術”で開発したスーパーリーンバーン。マツダ同様にラムダ=2.3程度の極薄混合気を使うが、燃やし方がユニークだ。吸気に強いタンブル(縦方向の渦)を与え、シリンダー内に強烈な空気流動を作り、ピストンの上昇につれてこの渦がどんどんつぶれ、最終的には直径0.8mmの極小渦になる。

 この小さな渦は少量の燃料を抱きかかえており、ここに特殊な点火プラグを使って通常のガソリンエンジンよりも長時間にわたる放電を行うと、無数の極小渦がすべて“火種”になる。ピストンが上死点まで上がりきると、圧縮されて温度が高くなった“火種”がいっせいに燃え、しかも燃焼は短時間で終わる。それでも発生する燃焼圧力はピストンを押し下げるのに十分であり、熱損失と排気損失がそれぞれ5%程度軽減される。

 3番目はプリチャンバー(副燃焼室)と呼ばれる方式だ。すでにF1マシンの燃費向上策として実用化されているが、同様の方式はホンダをはじめドイツのエンジニアリング会社、IAVなどが市販車を対象に開発している。

 この技術は燃焼室の頂点に置かれている点火プラグの部分をえぐり、そこに小さな穴が6~8個開いた半円形のキャップをかぶせてプリチャンバーを作り、点火プラグはこの奥に設定する。そして、このプリチャンバー内に燃料噴射装置を配置するというシステムだ。